8-97 レアアイテムを入手して、覇者になろう
「疲れたぁ。」
バタッ。
「スイ、生きてるか?」
「オウ、何とかな。コロは?」
「生きてるよ。キキは?」
「オレも生きてる。」
大王に就任した元、水手のスイ。大臣に就任した元、狩り人のコロ。臣に就任した元、釣り人のキキ。三人とも生き残り。
先代の耶万王に命じられ、北へ送られた兵たち。本気を出した隠や妖怪、祝など。アブナイのに狙われ続け、生きて戻ったのは三人だけ。
「なぁ。オレたちに、務まると思うか。」
「えぇぇぇ。」
「まぁ、難しいだろうな。」
三人ともクッタクタ。ビタァっと伸びたまま、動かない。朝から夕までイロイロ叩き込まれ、頭が割れそう。
「そういえば、聞いたか。」
起き上がろうとして諦め、仰向けに。首だけキキに向け、コロが切り出す。
「聞いたって、何を。」
同じように、首だけコロに向けるキキ。
「海を渡って儺国。それから誰かが奪って、耶万の大王に差し上げた『王の剣』の話。」
「重くて戦に向かない、古い飾りのコトか?」
「そうそう、それソレ。」
耶万が光に覆われる、ずっと前の話。
大王に呼び出された巫が、神のお告げを伝えた。バタンと倒れ、それから指差したのだ。儺国から耶万に齎された、鉄の剣を。
死んだ大王は思った。
『あの剣を軽く振り回せる者が、やまとを手に入れる。競い争い、勝った者にしか扱えない。そんな剣だからこそ、耶万に引き寄せられたのだ』と。
「その剣が、どうした。」
気だるげに、スイ。
「前の大王が使ってた建物。その焼け跡から、見つかったんだよ。」
目を輝かせ、コロ。
「気持ち悪いくらい、ピッカピカだった。」
「見たのか、キキ。」
スイの目の色が、ガラリと変わった。
剣を軽く振り回せれば、やまとの王になれる? 嘘だろう。そう思っていた。でも、もし真なら。
やまとの王になれば、万十も氛冶も怖くない。コロリと倒れるだろう。そしたら好きに生きられる。イイじゃないか。
「スイ?」
「なぁキキ。それ今、ドコにある。」
「さぁ。コロ、分かるかい?」
「知らない。」
大王に大臣、臣も知らないんだ。イツかアヤが隠し持っている。そうに違い無い。
コッソリ持ち帰り、万十か氛冶の王を殺して、次の王に。それから、やまとの王になるツモリだろう。
させるか! やまとを統べるのはオレだ。フフ、フフフ。社と助け合って、耶万を守る? んなコト知るか。
次の社の司になるのは、継ぐ子のアコ。年は十一、夏生まれ。十二になったら戻ってくる。そう聞いた。
冬が来る前に剣を手に入れて、ヤツらを従える。クックック。
ん、待てよ。あの喋る狐。『大蛇神の使いだ』トカ、言ってたな。社に入り浸ってるが、消せるのか? いや消そう。