8-96 歴史から学ぼうよ
やまとに上陸した二人は、人と妖怪の合いの子に食われた。さすが大王の臣。頭を乗っ取り、体を奪った。共食いの末、妖怪を食らって力を。
アンと同じだ。神に牙をむき、奪った力を奪われながら立ち向かう。サッサと諦め、王城に戻れば良いものを。アンリエヌに入った瞬間、消されるだろうが。
「分かったハズだ。アンナもマリィも、戻らぬと。」
「我々は決して、諦めない。」
国際問題になる前に、潔く引け。王位は譲らぬ。と言っても、難しかろう。国は器、民は宝。守りながら戦う。それが王。
大王は支配の才を駆使する事で、何とか国を治めていた。才を奪われた大王に統治など不可能。なのにヤツらは、夢を見続ける。
アンリエヌに王が二人いるのは、民と国を守るため。化け王は、大王の暴走を止める存在。
無能に統治させれば、どんな国でも滅ぶ。国が滅べば民が死ぬ。よって化け王の王位継承権は、常に第二位。
大王と皇太子に問題が無ければ、化け王が即位する事は無い。
化け王がアンリエヌ王になるのは、大王が王に相応しくないから。王位が欲しくば、化け王に認められる行動や、結果を出すより他ない。
にも拘わらず、この為体。
「思い出せフェン。王位継承権を持つのは、誰だ。」
・・・・・・。
アンリエヌの王位継承権を得る、唯一の条件。それは支配、もしくは収集の才を生まれ持つこと。よって現在、カーの他に継承権を持つ者は存在しない。
大王は名誉職。才を奪われ、化け王に生かされているダケの存在。才を持つのは当代、カー化け王のみ。『はじまりの一族』は絶滅危惧種なのだ。
現存する個体数は五。オス四体、メス一体。化け王だけ母は違うが、父は同じ。
奇跡的に子を生したとしても、その子が生まれる前にカーが死ななければ、収集の才は継承されない。つまり、ないナイ尽くし。
「大王こそ、アンリエヌの王に相応しい。」
「相応しくないから、こうなった。」
代理として数年、大王に任せる事は可能。しかし、王位は得られない。譲る気も無い。
「マリィ。陸からではなく、海から攻めよう。」
繰り返し挑戦して、クタクタ。
「そうですね。耶万に滅ぼされた光江に、狙いを定めましょう。」
奪いに奪って、力を蓄えた。ココからでも海からでも、見えない壁を通らねば。
向こうに広がるのは、畏れ山の統べる地。イヌに見張られ、戦どころか諍いも起きないトカ。対して大貝山の統べる地は、戦だらけ。
たっぷり力を蓄えて、海から入れば楽に奪える。北へ北へ奪いながら進み、霧雲山を目指す。アン王女のように。
「反逆者エンに、正義の鉄槌を。」
「偉大なる、エド大王の御為。」
アンナもマリィも揃って、目がコワイ。ランナーズ・ハイならぬ、チャレンジャーズ・ハイ状態?
いえいえ。コレは最早、宗教である。
帰依から生ずる敬虔な心も、程度を超えれば大問題。何事も程程が一番。なんて言っても通じないから、困るのよ。さて、どうしますか。