8-94 君なら、どうする?
『もう誰も痛い事しない』そう言われて、とても嬉しかった。
死んだけど、もう動けないけど胸がね、ポカポカしたの。セイさん。看取ってくれて、ありがとう。カツさん。手厚く葬ってくれて、ありがとう。
私は腰麻のアイ。父は戦に取られて、死にました。母と姉も、生きてイナイと思います。
弟は大野の男に、竹槍で殺されました。私を穢した、あの男に。敵を討ったら、腰麻に戻ります。
・・・・・・あれ。
魂は抜けてるケド、曝れ頭を見れば判る。間違い無い。獣に食い散らかされ、バラバラだけど、この感じ。忘れるモンか。
コイツ、死んで当たり前のヒトデナシさ。安に悦、光江に采、大野の生き残りと組んで、アチコチで子を攫って売っ払いやがった。
そうだ、あの子たち。
・・・・・・あれ。
逃げた? 縛られていた縄が、一つも残って無い。というコトは、助け出された。誰に。この辺りには、早稲しか。
良かった、救われたんだ。どの子もサッパリしていて、明るい顔をしている。酷いコトも嫌なコトも、辛い思いもせずニコニコと。
みんな幸せにね。きっと、きっと生きて。死ぬまで生きてね。私、腰麻に戻ります。さようなら。
早稲の皆さん、ありがとう。ありがとう。
「ガッ! ったい何なんだ。なぜ通れない、なぜ力が抜ける。なぜ、なぜだ、なぜ。」
「アンナさま。もっと多く奪えば、通れるのでは。」
「なぜ、そう思う。」
「体の一部だけ、見えない壁を通るからです。直ぐに引くので、分かり難いのでしょう。指を思い切り、突き刺してください。」
「分かった。」
・・・・・・と、おった。
「もっと奪えば、この体ごと通る。そうだな。」
「はい。」
この壁の向こうに、霧雲山がある。
中の東国、だったか。その中心に在るのが、霧雲山の統べる地。常に深い霧がかかっていて、雲のようになっている山を探す。
間違えないよう、シッカリ見なければ。いつも雲がかかっている、高い山は乱雲山。霧雲山の方が高いから、見れば判ると言っていたが。
「奪うぞ、マリィ。」
「ハイッ。」
どこに行っても戦、戦。
戦が好きなのか、ココの生き物は。怪しまれず奪えるから、まぁ良い。力を蓄え、一気に攻める。狙うはエン、ただ一人。捕縛し連れ帰れば、あの化け王を倒せる。
バケモノめ! 大王に跪き、命乞いせよ。オマエの存在そのものが悪なのだ。
サッサと気付け、愚か者。なぜ生きている。生きていて、恥ずかしくないのか。何が王だ、バケモノの分際で厚かましい。
「カー様?」
ネージュを優しく撫でながら、ニッコリ。
「何でもナイよ。」
君ならドウする? エン。