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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
釜戸社編
61/1621

4-15 無駄な抵抗は止そう

「い、嫌だぁ。」


逃げようとした、豊田の長。


ガブッ! ガブッ!


噛みつかれたまま、暴れに暴れるも、犬飼いに押さえつけられ、縛られた。


ズルズルと、仕置場へ。



「テツ、豊井の村へ帰るか。仕置を見届けるか。」


「見届けます。」


「では、そのように。使いに、傷に効く草を持たせます。効けば、良いのですが・・・・・・。」


「ありがとうございます。」


蛇川まで舟にのせ、それから馬を飛ばせば、月が上に来るまでに、着く。


「谷河の狩り人よ。ありがとう。出で湯に浸かり、休んでから戻りなさい。」


「はい。ありがとうございます。」


釜戸山といえば、出で湯だ。




「フゥ。」


両足を、ポーンと投げ出して座る。


「エイさま。」


祝女サカ、見逃しません。


「はぁい。」


女の子ですから。柔らかい布をかけ、大の字に。


「エイさま。」


そういうことでは、ありません。


「うぅ。」


座りなおした。思わず、クスッ。



「昼餉にしましょう。」


パァと明るい顔になった。


「はいっ!」


さすが食いしん坊。モフモフより、ごはん!




昼餉を食べ、告げ知らせを聞く。それから昼寝。


代々の祝に、課せられるものではない。祝とはいえ、五つの幼子。お昼寝は欠かせない。その間、いろいろ確かめる。



川北。激しく傷つけ、従わせる。命を奪い、弄ぶ。とても欲深い国。釜戸社の決めたこと? とりあえず聞いてやるよ、くらいのもの。逆らうかもしれない。


鷲の目には、初めから来てもらおう。たとえ、かすり傷一つでも、野呂が動く。


祝辺の守が命じれば、躊躇わず・・・・・・。霧雲山、祝辺の守とは、そういうもの。だから、どんな村も従う。逆らおうとすら思わない。



川北からも長が来た。五人も引き連れて。皆、手練れだろう。


社に来られるのは、二人。残り三人は、村にいる。もちろん、見張り付き。


霧雲山から人が来ているなど、夢にも思っていない。でなければ、凄んだり、脅さない。




「川北の国。」


裁きが始まった。鷲の目には、脇に座ってもらった。祝人も増やした。犬は三匹。抜かりはない。


大甕湖おおがめのみずうみは川北のもの。釜戸社の祝、受け入れ、認めよ。」


えっ、何を言っている。受け入れ、認めよ?


「断る。」


声が低い。お怒りだ。


「湖は、皆のもの。」


そう。欲張るな。


「認められるか! 何度でも言う。大甕湖は、川北だけのモノ。諦めろ。」


何しに来た?


「祝として、何度でも言おう。断る。」


ピリピリと、何かが走った。


「はっ、何を言う。」


いや、長こそ。何を言う。


「子が、大甕湖の水を汲んだ。それだけで鞭を振るった。何度も、何度も。駆け寄った母は、子をかばった。その母も打った。」


「それが、何か。」


「水を汲んだ、それだけ。なぜ傷つける。」


「ハハハハハッ。なぜ? わからないのか。川北の水を、許しなく汲んだからだ。大甕湖は川北のモノ。あたりまえ。そんなことも知らんのか。」


・・・・・・?


「認めよ、祝。大甕湖は、川北の国のモノだ。」


・・・・・・?


「認めたな。」


「なぜ、そうなる。」


「認めろ。」



「釣り人の子を縛り、湖へ投げ込んだ。狩り人の犬を蹴り、死なせた。洗いものをした娘を、切りつけた。助けに入った狩り人を、刺した。」


「ハッ、それが、どうした。許しなく川北のモノに触れるからだ。恥を知れ。」


なぁに、言っちゃってるの?


「申し出があった。野呂の、鷲の目が来ている。」


「で? それが、どうした。」


踏ん反り返って、何を言う。


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