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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
608/1588

8-92 娘の葬儀


隠れ里。他所よそから逃げ出したり、飛び出して出来た里。知られたくないから、山奥に隠れるように作られる。


他と結んだり、繋がりを持たない。そんなコトをすれば、どこに里が在るのか知られてしまう。



霧雲山の統べる地にも、多くの隠れ里がある。どことも結ばず繋がらず、隠れ続ける里は少ない。けれど、他は違うようだ。



司葉しば夜光よひ志太しだも、畏れ山の統べる地にある。釜戸山の灰が降るから、やしろを頼ったダケ。『畏れ川沿いに在る』とだけ言って、帰った直ぐに帰った。


矢羽やわも隠れ里だが、どこに在るのかシッカリ伝えてから『お願いします』と頭を下げて帰った。



「気になるなぁ。」



獣山で見つかった舟は、盗まれたモノだった。蔦山の舟は判りやすいので、間違えるコトはナイ。子連れだったから、早く切り上げて戻ったのに。


熊が出ない獣山は、子に教えるのに良い狩場かりばだ。


親を含めて、三人の狩り人に守られながら学べる。つまり、人の目が光っている。そんな所で、どうやって舟を盗んだのか。


舟が無いと帰れない。だから他の狩り人も、共に探してくれた。舟が見つかった所も、幾人いくびとかで探したそうだ。その時は無かったと聞く。



「畏れ山の統べる地にある、隠れ里か。」


「それも気になりますが、舟です。ポコさまは、どう思われますか?」


「フム。蔦山のは小さいが、舟だ。山に隠すのは難しい。となると、水に沈めたか。」



みよしに縄をシッカリ結んでから、舟を傾け水を入れる。そうすれば沈められるし、真っぐ引き上げれば、また使える。サッと沈めるなら、水に潜って。


獣山にも狩り小屋は有るが、暮らしている人は居ない。夜なら誰にも気付かれず、引き上げられるだろう。海の男なら、夜の湖に潜るコトくらい。いや川か。


いくら鮎川が大きく深くても、沈めるのは・・・・・・。



「気になるなぁ。」


「気になります。」


使わしめポコ、祝エイ。揃って頭をひねる。






腰麻こしま)に届ける?」


「涼しくなったケド、遠いからなぁ。」



早稲わさの奥の湖に浮いていた、娘が死んだ。救い出されて直ぐ温めたが、助からなかった。女の子の一人が言った。『腰麻の人』と、ハッキリ。



「埋めるより、焼く方が良いだろう。」


「なんで?」


「獣に掘り起こされて、むくろを食われちゃ気の毒だ。」


「そっか、そうだね。」



攫われて、掘っ立て小屋に放り込まれて、それで。契るんじゃなく他の子の前で、知らない男にイキナリ。怖いなんてモンじゃない。


誰も助けてくれない、逃げられない。『おさの娘なのに、なんで』って、泣いたもん。アタシはカツと契った。歪んでるし、イロイロあったけどさ。



はじめてユユを抱いた時、言われた。『産んでくれて、ありがとう』って。その時、思ったよ。『カツと出会えて良かった』って。でも、このコは違う。



「もう誰も痛い事しない。だからユックリ、おやすみ。」


「そうだな。ゆっくり休め、娘さん。」



秋晴れのもと、娘の葬儀がしめやかに執り行われた。


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