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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
607/1583

8-91 生きてるよね


「エイさま!」


やしろの司が飛び込んできた。


「シロさま。何ですか、騒騒そうぞうしい。」


おいにジト目で見つめられ、タジタジ。



獣山で、蔦山の舟が見つかった。盗られた舟なのか、誰かが攫われたのか。細かい事は分からない。けれど恐ろしいことに子が三人、縛られたまま隠されていた。



人攫いが残したと思われる品は、どれも山では見ない物ばかり。


獣山に残された舟を見つけたのは、良村よいむらのタケ。掘っ立て小屋を見つけたのは、飼い犬シロ。


子らを見つけ、布と縄を解いたのは三人。良村のシゲとムロ、飯田のスケ。



良村は大人が少ない。アヤシイ舟や人を見た、なんて話もチラホラ聞く。なのに子を残し、良村から三人も呼ぶのは気が引ける。というより難しい。






「エイさま。矢羽やわの子が一人、攫われたと。名はオリ、六つの男の子です。」


釜戸社かまどのやしろ祝人はふりと、ササが静かに伝える。


「また、隠れ里ですか。」



川から近い隠れ里で、子が攫われている。どの子もシッカリしていて、大人と共に森に入った。なのに消えた。


司葉しば夜光よひ志太しだいづれも、畏れ川沿いに在るとしか。『隠れ里だから、どこに在るのか言えない』と。



「矢羽の子は、どこで。」


兎原うさはらで攫われたと。」



夕方になっても、戻らなかった子は三人。日が暮れるまで探したが見つからず、次の日に二人、見つかった。


一人は昼過ぎ。兎原と魚川の間にある木の上で、幹にしがみつきシクシク。もう一人は夕方。兎原の西にある崖で、ジッと潜んでシクシク。



二人とも『殺される』『攫われる』としか言わず、話にナラナイ。


見つからない子。狩り人のせがれに持たせていた弓が、兎原の外れで見つかった。真っ二つに折られて。



矢羽では人に襲われたら矢を、攫われたら弓を折って、里の者に伝える。誰に攫われたのか分からないが、攫われたのは確か。




「子だけで狩りに出たと。」


「そのようです。」



矢羽は、兎原の西に在る隠れ里。鳥の川から少し離れている。釜戸山から使いを出して伝えたのに、言い付けを破った。とはいえ、攫われたなら探さなくては。



「里を出た日に、攫われたなら。」


「三日、経っています。」



鳥の川は広く、深い。下りの流れに乗れば、夜でも進める。暴れないように縛り、休まず進めば海まで。






「エイさま。獣山で見つかった三人、畏れ川沿いの里の子では?」


「分かりません。確かめようもアリマセン。」



子が攫われたと伝えるだけ伝えて、サッサと帰ってしまった。


司葉の妹ミヤは七つ、姉ミユは十二。夜光のチイは、六つの女の子。志太のキンは、九つの男の子。



狩りや木の実を採るため、大人に連れられ森に入った。少し目を離した隙に攫われたのに、アッサリしてるなぁ。なんて思ったの、私が一人っ子だから?


『また来ます』って言ったけど、いつ来るの。いろいろ困るんだけど。・・・・・・生きてるよね。


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