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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
606/1592

8-90 待つしかない


おさ! 獣山で三人、助け出されます。茅野に舟で運ぶので、受け入れてください。」


「なっ。でドコの、誰が。」


「分かりません。良村よいむらの人が三人、子を入れたら四人、助けに向かいました。」



子に狩りを教えに、獣山へ行ったのだろう。それで何かを見つけ、調べたら居た。


子にも手伝わせる、というコトは急ぎ。他の者に教えるより、子に任せた方が早いと考えた。



動かせないから舟で。動かせば死ぬような深手ふかでを負ったか、頭を強く打って、口から泡を吹いたか。いづれにせよ、要る物を揃えよう。






「ワン。」 オマタセ。


「見てて。」


タケとムロが皮をバッと広げ、上下に振ってピンと張る。それからソッと、土の上に。


「お願いします。」


ソラから皮を受け取り、狩り人二人が、同じようにした。



ソラは広げた布が飛ばないように、手と足で押さえる。シゲは子を一人づつ、ユックリ運んでユックリ下ろした。



「大人を乗せても破れない、強い皮だ。両の手でスミをシッカリ握って、落とさないように進んでくれ。」


「分かった。」



先頭はシロ。その後ろに、子を運ぶ六人。


タイとヨイは弓をシッカリ持って、見張りと護衛を務める。タケは人攫いが残したと思われる品を袋に詰めて、ソラに渡して後に続く。



アヤシイ舟まで着くと、タケが残された品を袋に詰めた。それから集まった狩り人を二人連れて、掘っ立て小屋へ戻る。


あかしをシッカリ見せるために。



舟に残された品も、掘っ立て小屋に残された品も全て、釜戸山へ持って行く。


見つけた子は、どこの誰だか分からない。けれど釜戸山が取り仕切っている、獣山の狩場かりばで見つかったのだ。釜戸社かまどのやしろに任せる。



救い出された子が助かるとは限らない。話せなくなったり、目を覚まさない事も。だから残された品と、見た者の話で裁く。






「待ってたよ、シゲ。車で運ぼうと思ったが。」


舟寄ふなよせで待っていた長は、子を見て顔色を変えた。


「このまま運ぶよ。舟を押さえて、寄せてくれないか。」


「あ、あぁ。」



子を寝かせたままユックリ持ち上げ、舟から降りた。それから家まで、静かに運ぶ。


冷たかった手足は少し、温かくなった。けれど顔の色は悪く、息遣いも弱弱よわよわしい。



体に溜まった悪いのを流すには、少しづつ水を飲ませて、ゆっくり外に出すのが良い。血が体を回って、指が動くようになるまで、気が抜けない。




「ソラ連れて戻るよ。シゲとムロは、残る?」


「オレも戻る。気になるコトがあってな。」


タケに問われ、シゲが答えた。


「分かった。オレ、残るよ。」



ムロは狩り人。強面こわもてだが、物静かで優しい。攫われて弱り、死にかけている人の扱いにけている。



「良村の狩り人、ムロです。よろしく。」


「茅野の村長むらおさ、サコです。こちらこそ、よろしく。」



サコは思った。良村の人が一人でも残ってくれれば、何かと心強い。助けになるよう努め、支えようと。


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