表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
605/1584

8-89 助かるよ


優しく抱き上げ、外へ。


まず布を解き、縄を切る。どれだけ縛られていたのか、全く分からない。はじめは足を抱えて、座らされていたのだろう。爪跡が残っていた。



見つけた時、横たわっていたのはつらくなったから。膝を折ったままだと、血の流れが妨げられてしびれる。だから三人とも、仰向あおむけだった。




「指、動くかい?」


シゲに問われ、ゆっくりまばたき。けれどピクリとも。


「腕を動かすのは、少し待とうね。」



縛られたまま動けなかった人が、イキナリ動き出すと死ぬ。シゲもムロも、嫌というほど見てきた。


なぜ胸を押さえ、苦しむのか解らない。血の流れが止められて悪いモノが溜まり、動いてドッと流れる。そのまま心の臓に刺さり、命を奪うのだろう。



こんなに小さな体では、きっと耐えられない。だからユックリ一本づつ、腕を横に動かした。



シゲもムロも、早稲わさの生き残り。狩り人なら皆、知っている。


だからおのが知らない、思いもしない何かを知っている。そう思い、スケも同じようにした。




「シロ。上から男を三人、連れて戻っておくれ。」


シゲに言われ、尾を一振ひとふり。それから直ぐ、タッと駆け出した。


「戻るでしょうか。」


良村よいむらの犬好きは、釣り人だったハズ。なんてコトを考えながら、スケがポツリと呟いた。


「戻るよ。」


ムロがサラリと言い切った。



戦い慣れているのは人だけじゃない。犬だって同じ、早稲の生き残り。


戦場いくさばから生きて戻ったのだ。助け出された子を見て、どうすれば良いのか、何が要るのか直ぐ分かる。






「ワン。ワワワン、ワン。ワワン。ワン。」


尾を二振ふたふり。耳を下ろしてから、三振みふり。



あの子たちに要るのは、動かさずに運べる物。


良村の舟には大きな布と、柔らかくした皮が隠してある。アレが要るって伝えるには、どうするか。他の犬からミッチリ、教え込まれている。



「下で動かせない人が三人、助け出されるのを待ってる。寝かしたまま運ぶのを取って戻るから、戻るまでに狩り人を三人、揃えておいて。ソラ、舟に戻るよ。シロは待て。」


「ワン。」 ハイ。


シゲさんもムロさんも、いっぱい救ったんだ。タケさんに伝えたから、きっと助かるよ。待っててね!




ポカンとしていたが、シロにグイグイ押され、ハッとする。


犬を残したのは、オレたちを動かすため。なら三人、狩り人を集めなければ。下で待っているんだ。



子の数だけ狩り人を残し、急いで探しに行った。連れて戻った狩り人はナント、十二人。






獣山には二隻で来た。だから二組ふたくみ、四人運べる。タケとソラが落とさないようにかかえ、走って戻った。



「じゃぁ行くよ、三人付いて来て。シロ。」


「ワン。」 コッチデス。


転ばないように、でも急いで向かう。



残った人は話し合い、横に広い舟を選んだ。


ココから近いのは馬守、早く運ぶなら舟寄せが近い茅野。というコトで先触さきぶれに、茅野の人が子を連れて走る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ