8-88 助けに来たよ
「ん、何アレ。」
獣山で狩りを教えていたタケが、何かに気付いた。
「ムロ、シゲ。オカシイの見つけた。行ってくる。」
「待て、タケ。オレが見て来る。だから、ソラを頼む。」
ムロに言われ、ニコッ。
「シロも連れてって。」
「わかった。おいで、シロ。」
「ワン。」 ハイ。
早稲の三人が裁かれてから、子を守る決まりが出来た。
山に連れて入る時は、親を含めて三人、狩り人を付ける。幼子なら腰に縄を結び、親と繋げて離さない。狩りを教えるなら、釜戸山が取り仕切っている狩場でと。
「クゥ。」 オカシイネ。
潮の香りと、獣の臭いがする。
引っ繰り返した舟を、枯れ枝や木の葉で隠してある。ヒョイと持ち上げると、中にも舟が。
「シゲ、来てくれ。」
「オウ。」
二人でユックリ持ち上げ、少し離れた所に下ろした。それから戻り、中に隠してあった舟を見る。
「コレ、蔦山の舟だ。」
シゲは釜戸山へ行った時、一度だが見た。他の舟より小さくて、舳の先に蔦で編んだ、細い縄が巻いてある。
「この縄、蔦だな。」
近くで見たのは初めてだが、ムロから聞いたコトがある。蔦山の舟について。
夏の終わり。川口の狩り人の子が、熊実で攫われかけた。直ぐに気付いた親が槍を投げ、驚いた人攫いが子を、肩から落とす。這いながら子が、親の元へ。
逃げようとした人攫いは、近くに居た狩り人が放った矢に、胸を貫かれて死んだ。
決まりを守っていたので、子は助かった。けれど、このままじゃイケナイ。イロイロと話し合い、決める。見慣れない舟や人を見かけたら、皆で見張ろうと。
「とんでもナイもん、見つけちまったなぁ。」
「ワン。クンクン、クンクン。ワン。」 ニオウゾ。ドレドレ、フムフム。ミツケタ。」
シロがタッと駆け出し、クルリ。
「ワン。」 キテクダサイ。
フリフリ、キュルン。
近くに居た狩り人に声を掛け、五人でシロを追う。少し進んで下りた崖に、掘っ立て小屋があった。男たちは見合い、頷く。中から音はシナイ、でもイル。
飯田の狩り人スケ、茅野の狩り人タイ、添野の狩り人ヨイ。三人が弓に矢を番え、二人を囲うように守る。
ムロが入口に垂れ下がっていた布を、剣を使ってヒラリ。
「えっ!」
「なっ!」
シゲとムロが、思わず叫んだ。
中に居たのは子。口には布、両の手足はキツク縛られ、紫色になっている。男の子は見る限り、狩り人の子だろう。女の子は木の実やキノコを採りに、山に入ったか。
「助けに来たよ。ココは暗いから、外で縄を切るね。いいかい?」
子らがユックリ、頷いた。
子は三人、良村の人は二人。一人だけ待たせるなんて、考えられない。
スケ、タイ、ヨイが見合い、スケが弓を置く。少しでも早く、外に出してあげたかったから。




