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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
604/1604

8-88 助けに来たよ


「ん、何アレ。」


獣山で狩りを教えていたタケが、何かに気付いた。


「ムロ、シゲ。オカシイの見つけた。行ってくる。」


「待て、タケ。オレが見て来る。だから、ソラを頼む。」


ムロに言われ、ニコッ。


「シロも連れてって。」


「わかった。おいで、シロ。」


「ワン。」 ハイ。



早稲わさの三人が裁かれてから、子を守る決まりが出来た。


山に連れて入る時は、親を含めて三人、狩り人を付ける。幼子おさなごなら腰に縄を結び、親と繋げて離さない。狩りを教えるなら、釜戸山が取り仕切っている狩場かりばでと。



「クゥ。」 オカシイネ。


潮の香りと、獣の臭いがする。



引っ繰り返した舟を、枯れ枝や木の葉で隠してある。ヒョイと持ち上げると、中にも舟が。



「シゲ、来てくれ。」


「オウ。」



二人でユックリ持ち上げ、少し離れた所に下ろした。それから戻り、中に隠してあった舟を見る。



「コレ、蔦山の舟だ。」


シゲは釜戸山へ行った時、一度ひとたびだが見た。他の舟より小さくて、みよしの先に蔦で編んだ、細い縄が巻いてある。


「この縄、蔦だな。」


近くで見たのは初めてだが、ムロから聞いたコトがある。蔦山の舟について。



夏の終わり。川口の狩り人の子が、熊実くまみで攫われかけた。ぐに気付いた親がやりを投げ、驚いた人攫いが子を、肩から落とす。這いながら子が、親の元へ。


逃げようとした人攫いは、近くに居た狩り人が放った矢に、胸を貫かれて死んだ。



決まりを守っていたので、子は助かった。けれど、このままじゃイケナイ。イロイロと話し合い、決める。見慣れない舟や人を見かけたら、皆で見張ろうと。




「とんでもナイもん、見つけちまったなぁ。」


「ワン。クンクン、クンクン。ワン。」 ニオウゾ。ドレドレ、フムフム。ミツケタ。」


シロがタッと駆け出し、クルリ。


「ワン。」 キテクダサイ。


フリフリ、キュルン。



近くに居た狩り人に声を掛け、五人でシロを追う。少し進んで下りた崖に、掘っ立て小屋があった。男たちは見合い、頷く。中から音はシナイ、でもイル。



飯田の狩り人スケ、茅野の狩り人タイ、添野の狩り人ヨイ。三人が弓に矢をつがえ、二人を囲うように守る。


ムロが入口に垂れ下がっていた布を、つるぎを使ってヒラリ。



「えっ!」


「なっ!」


シゲとムロが、思わず叫んだ。



中に居たのは子。口には布、両の手足はキツク縛られ、紫色になっている。男の子は見る限り、狩り人の子だろう。女の子は木の実やキノコを採りに、山に入ったか。



「助けに来たよ。ココは暗いから、外で縄を切るね。いいかい?」


子らがユックリ、頷いた。



子は三人、良村よいむらの人は二人。一人だけ待たせるなんて、考えられない。


スケ、タイ、ヨイが見合い、スケが弓を置く。少しでも早く、外に出してあげたかったから。



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