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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
603/1583

8-87 結ばなくても


おさぐ来てください。若い女が、奥の湖に浮いてました。」


「息は。」


「してますが、弱いです。」



オイオイオイ、その娘。掘っ立て小屋から消えた、腰麻こしまの娘じゃないか? どうしようって、呼びに来たんだ。村に運び込んだんだよな、きっと。



「セイ。」


「分かった。出来る限りのコト、するよ。」


そう言うと立ち上がり、サッと飛び出した。






早稲わさは変わったと聞いて、それはナイと呆れた。けれど、今なら判る。まことだ。


早稲は早稲だが、確かに変わった。村の女をチラリと見たが皆、穏やかな顔をしていた。痩せている人も居たが、幸せそうで。



女が笑って暮らしている。そんな里や村、国は良いトコロ。だから話し合いに持ち込む前に、必ず女を見る。


穏やかな顔をしていれば、ジックリ話し合える。暗い顔をしていれば引く。



早稲はせがれ二度ふたたび、助けてくれた。攫われた子を見つけ、湯を使わせて休ませた。攫われて恐ろしい思いをしただろうに、どの子も怯えていなかった。



信じよう。見せられた物も聞かされた話も、信じて結ぼう。少し前に仕留めた男は、安だった。光江、うね、大野。どれも耶万やまに滅ぼされた国ばかり。




里長さとおさ。『早稲と結ぼう』なんて、考えちゃイケナイよ。」


ヒトがニコニコ笑いながら、言った。


「なぜ、そのように。」


驚いた顔をして、スエが問う。


「なぜって、早稲は戦好いくさずき。風見かぜみと結んでいる。」


涼しい顔をして、ヌエ。


「早稲から仕掛けるコトは無いが、風見から求められれば動く。里でも村でも国でも結ぶってのは、そういうコト。」


サラッと、カツ。


「早稲と結べば、いくさに出るコトになる。それでも中主なすは、結びますか?」


優しい声で、ヒトが問う。



そうだ、早稲は早稲。いくら変わっても戦好き。人を攫わなくなった、戦を仕掛けなくなった。それだけ。


結ばなければ良い。助け合えれば、それで。なら、どうする。



「早稲はね、睨まれてマス。釜戸山と乱雲山に。風見と結んでいるコトも、広く知られた話。そんな村と結んじゃイケナイ。」


「ヌエの言う通り。それに、結ばなくても付き合える。中主は隠れ里、これからも隠れ続ければ良い。」


「長もこう言ってるし、どうだろう。商いで繋がるってのは。」


カツに言われ、驚いた。心が読めるのかと。




中主が結んでいるのは、菜生なせ中多なた。どちらも隠れ里。


早稲の力を借りられるなら、なんて話が出たコトも。けれど結べない、結んじゃイケナイ。早稲は早稲だ、風見とも結んでいる。



結んで無いが、付き合いが有るのは浅木。早稲と商いで繋がるなら、浅木の許しが要る。しばらく見張られるだろうが、早稲は変わった。いつか許しが出るだろう。




「早稲は浅木とも付き合っている。耶万から頼まれて、食べ物を光江に運ぶんだ。その話し合いが、明日あした。」


ヌエに言われ、またまたビックリ。


「話、通そうか?」


カツに言われ、ツクはスエと目で話し合い、決めた。


「お願いします。」


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