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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
602/1584

8-86 アタシ鈍いけど


早稲社わさのやしろの隣に、家が建っている。住んでいるのは社の司、シギ。話し合いに立ち会う事があるので、大人が十人ほど入れる。


このたびの話し合いにも、シギが立ち会う。



早稲わさからは四人。おさのヒト、大臣おおおみヌエ、狩頭カツ、カツの妻セイ。


中主なすからは二人。里長さとおさのツクと、狩頭のスエ。






「そうでしたか。」


話を一通り聞いたツクが、やっとの思いで言った。



押し込められていた子の話は、助け出したヒト。シンの話は、セイとカツから聞いた。



はじめに小屋を見つけたのは、言の葉が出ない十二の娘。ヒトに知らせたのは、その兄だった。


妹は男を怖がり、兄から離れない。だからココには来られない。


それだけ聞けば分かる。妹の身に、何が起きたのか。何を思い出したのか。




セイが子から聞いた話によると、もう一人捕らえられていた。腰麻こしまの娘で、年は十三。名は分からない。


隠れ家が見つかり、弟を連れて逃げた。追手おってに見つかり、弟を目の前で殺され、今井から浅木に送られ、逃げ出した。また捕まり、あの小屋へ。




人攫いは男。縮れ毛で浅黒いのが三人、足に布を巻いたのが一人。二つの顔を持つのが一人で、合わせて五人。


二つの顔を持つのは、他の男と話すときはニコニコしてるのに、スッと酷くコワイ感じになる。



言えないようなコトをしたのは、そのコワイ感じのヤツ。たまにふところから何かを出し、ニヤニヤしていた。




「シンを攫ったのはニヤニヤ男だろう。懐を探ったら、ソレが出て来た。」


割符わりふを指差し、カツが言う。


むくろを見せて確かめようと思ったケド、めた。ガクガク震え出したんだ。アタシ鈍いけど、直ぐに解ったよ。酷い扱い、受けたんだって。」


セイの話を聞いて、ツクも考えを改める。



いきなり攫われ、あんな所に放り込まれたんだ。それに、あの血。もし目の前で。ヒトの思った通りなら、そうなる。



「子らは遠くからしか、懐から出した『何か』を見てない。だから分からないでしょうね、割符を見せても。それでも確かめると?」


ヒトに問われ、ツクとスエは動けなくなった。


「カナに嗅がせて確かめた。同じ男だろう。」


カツの目も、冷たい。




早稲は変わった。とはいえ、早稲は早稲。ヒトもヌエもカツも、人が酷い扱いを受ければ、どう変わるか知っている。覚えてないホド繰り返し、言えないコトを。


そんな三人が、同じ目で見つめる。『骸やふだを見せて、確かめるのか。助かってホッとした子を、追い詰める気か』と。




「オレ、『早稲の他所よその』人でな。アチコチ行かされた。だから持ってる物や見た目で、何となく判る。」



縮れ毛で浅黒いのは光江、足に布を巻くのはうねだ。どちらも耶万やまに滅ぼされた国で、離れている。


死んだ男は、判る物を持って無かった。見覚えも無い。



ヒョロっとしてたから大石じゃない。鳥の羽をしてなかったから、伊東じゃない。今井と安井のは皆、『耶万の夢』で死んだ。


顔が歪んでたから、腰麻じゃない。攫った人を物として扱うのは、安と悦。安は、攫ったのを殺さない。顔を使い分けて、弱いのをなぶるのは大野だ。



「だから何となく、思うんだ。娘を穢し、シンを攫ったのは安だって。」


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