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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
601/1604

8-85 探していた子


「ワン、ワワン。」 ナスカラ、オサガキマシタ。


「どうした、カナ。」


体を舟寄せへ向けたまま、カツを見つめる。


「舟寄せに、誰か来たのか。」


「ワン。」 ハイ。


尾をフリフリ。



「セイ。『使いならやしろに連れて行く』って、シギに伝えてくれ。」


「わかった、気を付けて。カナ、頼むよ。」


「ワン。」 オマカセクダサイ。


キリッ。






「おはよう、カツさん。使いも出さず申し訳ない。・・・・・・里の子が、攫われてね。」


「シンなら早稲わさに居る。森で見つけた。攫ったヤツは森に捨てたよ、死んでんだろう。助かんねぇよ、アレじゃ。」


「そうですか。その、傷などは。」


「転んだんだろう、り傷が少し。袋に入れられてた。怖かっただろうな、落とされたし。」


「エッ!」


息子が無事だと分かってホッとした父、ビックリ。


「まぁ他にもイロイロあってな、来てくれ。」



舟寄せから少し離れた森の中。隠すように建てられた、ボロボロの掘っ立て小屋。外から見ても分からない、そんな隠し方だ。



「ココにな、子が八人。縛られて隠されてた。」


カツが指差し、サラッと言う。


「なっ、何だって!」


中主なすおさツク、狩頭スエ。兄弟揃って叫ぶ。


「みんな早稲に居る。残ってた舟とか縄とか、村に有るから見てくれ。」


「分かった。」



掘っ立て小屋の近くに、血が残されていた。助け出された子の誰かが、傷つけられたのだろう。


早稲の誰かが傷つけたのなら、見せずに隠すか消すハズ。『見せた』というコトは、攫ったヤツが。・・・・・・許せない!



救われた子から聞き出すしか無い。何が起こったのか、シッカリと確かめなければ。などナド考える兄弟、怒りを抑えながら、カツの後ろを黙って歩く。






「父さん!」


シンがタッと駆け出し、ツクに抱きついた。


「兄ぃ。」


スエがツクの背を叩いて、目配めくばせ。


「・・・・・・エッ!」



ズラッと並んだ子の中に、菜生なせ里長さとおさせがれと娘。中多なたの里長の倅と、狩頭の倅が居た。



「長。知ってる子、居るかい?」


「四人、居る。どの子も森で消え、探していた子だ。」


「そうか。じゃぁ残りは、他から攫われた子か。」


「カツさん。その四人、どうするんだい。」


「釜戸山へ連れて行く。何があったのか隠さず、全て話す。シンと他の子は、隠れ里の子としか言わないよ。」


「ありがとう。」



湯を使わせてもらったのだろう。皆、サッパリしている。お腹いっぱい食べ、グッスリ眠ったのか。どの子も怯えず、真っぐ前を向いて立っていた。



「はじめまして。早稲の長、ヒトです。」


「はじめまして。中主の長、ツクです。」


「あちらで少し、話せますか?」



子らを長の家に戻してから、早稲社わさのやしろへ。


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