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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
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8-84 考えたくナイけど


早稲わさ湯場ゆばは小さいので、肩まで浸かれない。それでも、湯を使えるなんて夢のよう。汗や汚れを洗い流し、サッパリする。それから仲良く、夕餉をパクパク。


早稲はコワイ村。でも、聞いていたより良い村だ。誰も怯えてないし、女の人も子も、みんな笑っている。生まれも育ちも早稲って人は、そんなに多くナイらしい。



一度ひとたびだけかくまって、酷いコトするのは昔の話。帰りたければ帰れるし、残りたければ残れる。


子が戦場いくさばに放り込まれるコトは無いけど、早稲を守るために戦うコトは有る。



いくら早稲が変わったと聞かされても、信じきれない。そんな子は名も、どこから来たのかも言わない。知らない人に言ってはイケナイと、親からしつけられている。



八人の中で分かっているのは、中主なすのシンだけ。シンが幾ら聞いても、誰も答えなかった。けれど森で親とはぐれ、攫われた子だと分かった。




「アタシのカンだけど、兎原うさはらの子の後ろに隠れてた三人。西から来た子だと思う。『北から来た子の側にいれば、南の子だとバレない』って、考えたんじゃナイかな。」


「女にも言わないか。」


「キョロキョロするダケで、なぁんにも。」



早稲は悪い村。そうさ、違い無い。早稲は戦好きな、悪い村だ。もしオレが良いヤツなら、シゲを追っかけて早稲を出ている。


他所よその人で残ったのはオレ一人。嫌なコトあったけど、気に入ってんだ。だから残った。



早稲のヤツらは弱い。弱いから強がる、虐げて喜ぶ。逃げ込んだ人に、言えナイようなコトをする。奴婢ぬひにシナイだけマシさ。って言っても、酷いのは同じ。



「光江に行くの、しばらく延ばそう。」


「それは良いが、どれくらい延ばす。」


「えっ、良いのか?」


カツの提案を受け入れたヒトに、ヌエが思わず問う。



「なぁヌエ、オカシイと思わないか。」


「何が。」


「川下で見つけた舟も、子らを縛っていた縄も、海で使われる物だった。シンが入れられてた袋は、光江の物だ。」


・・・・・・。


「あのなヌエ、ヒトは言いたいんだ。海から来たヤツが、鳥の川を通らずにナゼ、兎原に行けたんだって。」


カツに言われ、やっと解った。


「それオカシイ。南から北を目指す舟は、早稲が見張っている。」


「そうだ、オカシイんだよ。早稲の前を通らずに、鳥の川を上るなんて。」



しいの川を上がっても、鳥の川とは交わらない。ずっと上がって暴れ川、早川から鳥の川に入ればイケルが、難しい。


オヤジやジン兄、タツが殺しまくった所為せいで、北の守りが固くなった。見慣れない舟が通れば、必ず声を掛けられる。



南から商いで? カラの舟じゃぐバレる。


そもそも川の流れに逆らって漕ぐのは、力が強くなけりゃ難しい。ってコトは狩り人。南でも狩れるのに、北まで? ないナイ。北に知り合いでも居なけりゃ、怪しまれる。



「なぁヒト。考えたくナイけど、早稲に受け入れた人の中に。」


「考えたくナイけど、そうだな。」


「兄さん、二人とも落ち着いて。舟を頭に乗せれば、山の中でも運べる。そうでしょ、カツ。」


「あぁ運べる。他所の皆、村外れまで運んでた。」


「そういえば、そうだった。」


ヒトとヌエが思い出し、ポツリ。



話し合いの末、決まった。攫われた子を釜戸山に託してから、食べ物を届けると。


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