8-82 そう怯えるな
川沿いの森に隠されていたのは、子ばかり八人。男は五人で皆、狩り人の子。女は三人で、八つぐらいか。
親の言い付けを破って、攫われた子が一人。他は親と離れたトコロを狙われ、攫われたらしい。
「さぁ着いた。着てるモンは、ココに。」
・・・・・・。
「そのナリじゃ困るんだよ。小っちゃい子が居るんだ、洗い清めとくれ。湯を入れたから暖かい。ほら。」
子らが見合い頷いて、丸太を刳り貫いて作った入れ物に、人差し指をピチョン。パチクリして、ニコリ。
出で湯ではナイが囲ってある。村外れだけどココは、早稲の湯場らしい。痒くナイけど泥だらけ。女の子だもの、キレイにしたい。
「あの・・・・・・。」
「ハイハイ。何かあったら呼んどくれ。」
そう言って、セイが外へ出た。子らはスポンと脱ぎ、温い湯を掛け合う。籠に入っていた布を浸し、ゴシゴシ洗いっこ。
「着てたのは洗うから、乾くまでコレを着な。」
洗い終えた頃、セイが外から声を掛ける。
「はい。」
「ありがとうございます。」
「お借りします。」
みんな、シッカリ躾けられた良い子たち。これから何が起こるのか、全く分からない。それでも良くして貰った。だから、お礼を言う。
「女が洗い場を使ってる、出るまで待て。でだ、どこから攫われた。」
・・・・・・。
「この人はカツさん。良い人だよ。オレはシン、犬の名はチロ。オレたち二度も、早稲の人に助けられたんだ。」
シン、ニッコリ。チロは尾をフリフリ。
「お、オレたち。ゴクリ。いっ、戦場に?」
あぁ、そうだよな。そう思うよな、思われるよな。早稲だから、そう思うんだよな。
「早稲は変わった。長はヒト、大臣はヌエ。女を纏めるのはセイ。皆、あの長の子だ。オレは違う。早稲に奴婢は居ないし、迷わず攻める。戦好きだが、早稲からは仕掛けない。なぁ、長。」
「カツの言う通り。確かに、早稲は戦好き。ソレは変わらない。結んだ国から頼まれれば、兵を送る。」
やっ、やっぱり・・・・・・。揃ってウルウル。
「けど攫わないし、虐げない。助ける。そう変わったんだ。」
「ヌエの言う通り。だから、もう怯えるな。」
ニコッ。カツは強面、迫力満点。
「オレ、兎原で攫われました。子だけで狩りに。『深追いするな』って、言われてたのに。」
「兎を追っかけて、森に入ったのか。」
カツに言い当てられ、コクンと頷く。
「兎原には釜戸の灰が降る。だから、釜戸山へ連れて行こう。オレたちは子を見つけ、助けたダケだ。」
「ヨシ、そうしよう。」
ヒトが言い、ヌエが頷いた。
釜戸山といえば、釜戸社。霧雲山から裁きを任された、強い祝が守る山。釜戸山の灰が降る地で起きた事は、全て釜戸社が裁く。