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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
595/1582

8-79 いけ好かない男だねぇ


「木の実、キノコは採った。残りのドングリは、獣に残そう。」


「はい、セイさん。」


大人も子も、キリッ。






玉置と三鶴に攻め込まれ、ボロッボロにされた。そんな早稲わさに戻ったのがセイ。


救い出されて乱雲山で暮らしていたのに、わざわざ戻った変わり者。カツと契り、子を産んだ。



そのカツがヌエと共に捕まり、釜戸の裁きを受けた。早稲に残る狩り人は、カツ一人だけ。カツが居なくなれば、どう考えても冬を越せない。



おさになったヒトは、セイを頼った。乱雲山から食べ物を、少しでも良いから分けて貰えないかと。


言うまでもなく、断られた。『大口を叩いて出たのに、んなコト言えるか』と。セイはどんな時も、セイである。




『頼りたくない頼らない。動けるんだから食べ物くらい、山で探せ。死にたくなければ働け、歩け、サッサとしろ!』と叫んで、ギロリ。


ビビった早稲の皆は、言われるまま山へ。残りは田や畑を整え、作付けを。そうして誰一人死なさず、冬を越せた。



早稲の長はヒトだが、早稲を救ったのはセイである。気が強く、思い込みも激しいが皆、従う。イロイロあったが母、強し。セイは早稲でも、たくましく生きている。






「オイ見ろ、犬だ。・・・・・・流されてナイか?」


仔犬が流されながら泳いでいるのを、早稲の狩り人が見つけた。


「ん。オイあれ、舟じゃないか?」


少し先には、見慣れない舟が一隻。


「あっ、カツさん。」



カツが飼い犬、カナを肩に乗せたまま、泳いでコチラへ。


流されていた仔犬を捕まえ、頭に乗せスイスイ。立ち上がると仔犬をつまみ、ジッと見る。そのままジャブジャブ川を歩いて、岸に上がった。



「チロ、攫われたのはシンか。」


「キャン。」 ソウデス。


一鳴きするとクンクン。クン、ククン。クンクン。しばらくするとクッと顔を上げ、タッと森の中へ駆け出した。


「カナ、行け!」


「ワン。」 ハイ。


チロを追いかけ、森の奥へ。



「オマエら、付いて来い。」



走りだしたカツの後を、二人の狩り人が追いかける。どちらも何も言わないが、人攫いが近くに居ると思った。






ドサッ、ガサガサッ。



音のする方を見ると、大きな革袋を担いだ男が一人。袋の中に入っているのは、攫われ子だろう。獣にしては、動きがオカシイ。


離れているが山育ち。セイにだって、それくらい見分けられる。



食べ物が入った袋を、近くにいた子に持たせた。それから、矢をつがえるように目配めくばせ。弓の上手うまい女たちが、黙って頷いた。狙うのは、人攫いの腰。


腹を狙っても、あたるとは限らない。子に中れば殺してしまう。だから、腰を狙う。



「ちょっとアンタ、なにソレ。」


この辺りじゃ、見ない顔だね。


「はっ。女が偉そうに、何だ。」


いけ好かない男だねぇ。


「ココは早稲の山。子でも獣でも、みんな早稲のモノ。ソレ置いて、サッサと消えな!」


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