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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
594/1583

8-78 チロ、ごめん


「オイ安、残りはドコだ。三人で来ただろう、言え。」


人攫いの首をガッと掴み、カツが問う。


「なっ、違う。」


分かりやすく、目が泳いでいる。



「オイオイ。この顔、忘れたか?」


「・・・・・・わ、さの。バケモノ!」


めんなよ、照れんだろ。」


いや、褒めてないよ。きっと。


「ホレ、見ろ。早稲わさの薬だ。」


チラチラ見せびらかせ、ニタァ。


「わ、分かった。言うからクレ。」


「あぁん?」


「言います。だから、助けてください。」



洗いざらい吐かせてから、瓢箪ひょうたん里長さとおさに渡した。中身? もちろん水です。沢でみました。



「ピュピュゥ。」


『まだ一人、残っている』という、合図。






「ングゥゥ。」 誰か、助けて!


「キャン、キャキャン。キャイン。」 ハナセ、シンヲカエセ。タスケテェェ。



おさである父の言い付けを守り、飼い犬チロを抱えて急いだ。もう少しで里に着く。そう思った時、イキナリ襲われた。


男の腕に噛みつき、逃げたが捕まり、口に布を噛まされる。腕と足を縛られ、身動きが取れなくなった。



チロは飼い主を守ろうと、激しく吠えるも腹を蹴り上げられ、高く飛ばされる。それでもスクッと立ち上がり、男の後を追いかけた。



「キャン、キャン。」 ダレカキテ、タスケテ。


吠えながら追うが、どんどん離される。



逃げ足が早かったので生き残った。男は水手かこで、腕の力が強い。幼子おさなごかかえて走るくらい、何でもなかった。


アッと言う間に山を駆け下り、川へ。



シンを肩にかついだまま隠していた舟を川に浮かべ、ボンと荒荒あらあらしく投げ入れた。舟を押して乗り込むと、慣れた手つきでかいを操り、流れに乗せる。



シンは賢い、狩り人の子。


縛られたが、縄がゆるいとぐに気付いた。櫂は一つ、前を向いて漕いでいる。だから舟に転がした子が、縄を解いたのに気付かない。



ボチャン。



舟に横たわったまま、肩から川に飛び込んだ。スゥっと潜って、流れに逆らって泳ぐ。布を噛まされたまま入ったので、息が続かない。


足が着くまで泳いで、ザブザブ歩いて逃げた。ココがドコだか分からない。けど、近いハズ。川を渡ったから、コッチは早稲だ。



「待てぇぇ。」


ゲッ。


「キャン、キャキャン。」 ニゲテ、アイニユクカラ。



ごめんチロ。逃げるけど、また会える。きっと会えるよ。






安の水手は急いで寄せた。舟を飛び降り、みよしを掴んで引き寄せ、上げる。それから子を追い、森の中へ。



シンは狩り人の子、足だって早い。川を渡ったのは初めて。知った人に会えるとは限らない。それでも走る。


今は食べ物を探して、森に入る人が多い。だから狩り人か誰か、早稲の人に会える。そう信じて。


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