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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
593/1585

8-77 ソイツ、安だ


「シン。チロを抱いて、里へ戻れ。」


「父さん?」


「早く。」


「おいで、チロ。」



里から少し南。この頃アチコチで、狩り人の子が攫われている。そう聞いた。だから子の犬飼いは、必ず大人と歩く。オレ嬉しかったんだ、父さんと歩けて。






「ウゥゥ。」 チカイ。


この早さ、大人だ。何かかついでいるのか、それとも体が重いのか。足音がドスドス大きい、隠す気が無い。


「この辺りでウチじゃなけりゃ、中多なた菜生なせ。」


狙われるのは狩り人の子。連れていた犬は殺されて、罠に使われる。




「オイ、ソレは何だ。」


男が革袋に入れた何かを、肩に担いで運んでいる。


「はぁ? 何だテメエ。ってぇ!」


男の目に、毒矢を放つ。


「ヴゥゥ。」 コヲハナセ。


脹脛ふくらはぎに噛みついた。暴れれば暴れるほど、あごに力が入る。諦めろ、人攫い。



「ヒュヒュゥ。」


犬が戦っている間に、口笛で知らせる。『敵だ』と。


「ギャァァ。」


男が痛みに耐えられず、悲鳴を上げた。



ドサッと落とされた革袋を引き寄せ、手早く開ける。中に入っていたのは幼子おさなご。口と鼻に手を当て、息をしているか確かめた。良かった、生きている。



「アオォォン。」


里長さとおさが大きな声で、犬の鳴き真似まねをする。するとぐ、狩り犬が飛び出してきた。


「ヨシ、行け。」


迷わず犬をけしかけ、人攫いを襲わせる。


「ヴゥ。」 コロォス。


尻餅をつき、犬に噛まれている足を激しく動かす男の左腕に、ガブリ。


「ギャァァ!」


右手で犬の頭を掴み、引きがそうとする。しかし、ビクともしない。上下から力を加えられ、骨にヒビが。




「生きている。」


静かに走ってきた若い男に子を託し、首をクイッ。すると黙って頷き、飼い犬を連れて戻った。


「ヒュ、ヒュゥゥ。」


合図を送ってから、もう一人の狩り人と里長が見合い、人攫いを縛り上げる。犬を下がらせ、ふところさぐった。


「オイ。コレは何だ、ドコから来た。」


割符わりふを見せ、問いただす。


「言うかよ。」


足もヒドイが、腕の傷が深い。骨が見えている。




「ソイツ、安だ。耶万やまに滅ぼされた。攫っても殺さず、売っ払う。」


早稲わさのカツが若い男を連れて、近づいてきた。


「なっ、嘘だ。」


「安のミエ、おさせがれだ。その首の黒、良く覚えてる。白くて長い毛、生えてるハズだ。」


カツに言われ、長が確かめる。



腰麻こしまのユキがアラカタ片付けたが、まだ残っていた。


狩り人の子を狙ったのは、高く売れるから。安の者は攫う時、一人では動かない。この地にも、三人で来た。



近くに居ない。向こうでも捕まえたハズ。だから死なせても良いが、聞き出さなくては。


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