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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
592/1583

8-76 知られてはイケナイ


「オイ。」


「オゥ。」



獣の皮をいで作った、仕留めた兎が二羽ほど入る袋。口に小さな穴を開け、紐を通してある。獲物に被せてキュッと引けば、この通り。



「なっ、グッ。」


「たっ、ヴッ。」


「やっ、ゴッ。」



鳥の羽をむしって、血を撒くように抜く。足を縛って枝からブラ下げ、火にかけパタパタあおげば釣れる。犬と子を離せば、攫いやすい。



「急げ。」


誰か来る。



投げられた子を受け止め、肩に担ぐ。捕まえた子は腕に抱え、舟まで休まず、静かに走った。



子を投げた男は罠まで戻り、犬にとどめを刺す。火を消し、音を出さないように気を付けながら、ひたすら走り続ける。


子らが連れていた犬は、たった一匹。ぐに片付いた。






耶万やまから闇が溢れ、おにと妖怪が暴れた。多くの命が奪われ、多くの人が傷ついた。


耶万は戦好いくさずき。アチコチ仕掛けて、攻め滅ぼす。噂を聞き付けた真中まなか七国ななくにしづめ西国にしくにに仕掛けられ、つわものをセッセと送り続けた。


だから居ない。若い男、動ける男が。子も死んだ。いくさに要るのは兵、戦の具、食べ物。男も食べ物も戦に取られ、残された者を苦しめる。



子は弱い。直ぐに熱を出し、病にかかる。


力を付けようにも食べ物が無い。だから日に日に弱って、死んでしまう。病じゃなくても飢えて死ぬ。ドロンとした目で、遠くを見つめて。



人が居なけりゃ連れて来れば良い、攫えば良い。


どうせなら強い人、育つ子が良い。強い村や国は避ける。どちらも守りが固いから、直ぐに見つかる取り返される。



風見かぜみ早稲わさ。浅木、岸多きした良那らな実山みのやま、大稲、大倉。万十まと氛冶ふや宿儺すくなもイケナイ。川や海が近ければ攫いやすいが、危なくて手が出せない。



狙うなら隠れ里。南じゃ滅んで、ほとんど無い。が、有る。見つけた。


川から離れているが、犬を飼ってやがる。日暮れ前、連れ立って歩くんだ。川のほとりを、子だけで三人も。






「何だ、コレは。」


食べようとして、した事じゃ無い。罠だ。


「ウゥ、ワン。」 チカイ、シンデル。


駆け出さず、飼い主を見つめる。


「ヨシ、行け。」


「ワン。」 コッチデス。



人攫いは三人、乗ってきた舟は二隻。せっかく攫ったんだ、返す気は無い。見つかる前に漕ぎ出して、遠くに逃げる。犬のむくろを捨ててから戻ったのは、そのため。



「ワン。クゥン。」 ミツケタ。キノドクニ。


死んでから運ばれたんだろう。確か飼い主は、子だったな。・・・・・・きっと、攫われたんだ。



「この殺し、光江だな。」


他所よそで殺して、ココまで運んだんでしょう。」


「罠だと分かって食い付くホド、腹ペコだったのか。」


「埋めてやりましょう。」


「あぁ。近くには居ないようだが、急ごう。」


里を知られてはイケナイ。だから遠回りして、戻る。


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