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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
591/1583

8-75 辛いハズなのに


冬が来る前に耶万やまへ戻りたい。きっと食べ物の事で、激しい争いが起こる。


耶万の王になった、あの男。これまでの王と同じ過ちを、笑いながら繰り返すだろう。だからオレが、この手で。



ザク、ダイ、リキ、ヤヤ。小さい子も耶万から逃げた。


ザクが大倉、ダイが大稲の纏めを務め、多く生き残ったと聞いている。みんな心も体も、健やかだと良いな。



祝の力が出たのは今のトコロ、オレだけ。リキたちにも眠っていると思う。継ぐ子になったのは皆、祝女はふりめ祝人はふりとの子だから。




オレは蛇谷の祝、ひかるの子。母さんはオレを産んでぐ、死んだ。なのにオレの中に残っている。母さんが見た事、された・・・・・・。口にするのも嫌な事、全て。



水手スイ。母さんを大王おおきみに差し出し、女を選ぶ許しを求めた卑しい男。


蛇谷の人は悪くない。なのにイキナリ攻め込んで、傷つけ捕まえ奴婢ぬひにした。許せない!



悪いヤツは皆、死んだ。なのにスイはノウノウと生きている。あんなのが王? 認めない。黙って従っているのは、万十まと氛冶ふやが怖いから。目を光らせているから。



作付けが終わるまで、耶万に残るらしい。でも、いや違う。だから出来るだけ多く、広く学びたい。


良那らなで学ばせてもらえるのは、やしろの事だけ。言われたんだ。『悔しかったら、強くなれ』って。






「伸ばそうとするな。刺すように、スッと動かすんだ。」


良那の国守、オト。


「はい。」


耶万の継ぐ子、アコ。



闇の力にはイロイロある。大きく分ければ、守りと攻め。アコの力は強く、どちらも使える。守りながら攻められる、とても珍しい闇だ。



戦好いくさずきに知られれば、必ず狙われる。戦場いくさばに放り込まれる。だから鍛えて、誰よりも強くならなきゃ。


おのを守れなければ、誰も守れない。もう奪わせない、決して。




「人ですよね。」


良那の社の司、ウカ。


「今は、人だな。」


良那神らなのかみの使わしめ、スオ。



・・・・・・わぁぁ。オトと戦って、立ってるダケでも凄いよ。アレ食らったら、妖狐でも吹っ飛ぶから。






アコは死にかけた。良那にかつぎ込まれた時、息してナカッタ。なのにクワッと目を開いて、ゲホゴホ咳込んだ。うぅん。生き返った、のか?


まっ、健やかになって良かったよ。



あれだけ濃い闇を纏えば、動けなくなるハズなのに、アコは動ける戦える。闇の力は母から、たくましいのは父から受け継いだのだろう。



言わない。だから聞かないが、耶万の大王だろう。祝だった母を穢し、はらませたのは。継がせる気が無かったから、継ぐ子にした。



『母には似てませんが、祝の力は同じです』と、悲しそうな目で言った。憎い男に似た顔を見るのは、辛いハズなのに目を背けず、ギッと睨みつける。



アコは子だ、まだ子なんだ。あんな顔させられない。でも、どうすれば良い。


母は己を産んで直ぐ、死んだ。己が居なければ生きていた、死なずに済んだ。そう考えてもオカシクない。






「幸せに、なってほしい。」


スオがポツリと呟いた。


「そうですね。」


ウカも同じ望みを抱く。


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