8-74 まだ、そのようなコトを?
「人の世は、どうでしょう。」
白兎は思った。隠の世がダメなら、人の世にと。
「そうか。試してみよう。」
今、開いているのは三つ。鎮の西国、中の西国、真中の七国。
大蛇神が御坐す良山は、中の東国の真中に在ると聞く。真中の七国の隣に在るのが、中の東国なのだ。何とかなる、かもしれない。
「木俣神。」
「なんだい、稻羽。」
「良山より、魂呼湖の方が。」
「ホウ、それは良い考えだ。」
白兎もニコリ。
魂迎湖、魂呼湖、底なしの湖を結んだ中に、黄泉湖が広がっている。人の世からは子狐の川か、羽川を通らなければ決して入れない。
霧雲山の統べる地の、どこに在るのか分からない良山を探すより、湖のアチコチから水が湧き出している、魂呼湖の方が探しやすい。
「では、辿ろうか。」
木俣神、キリッ。
スイィっと水筋を辿る。ずっと遠くまで進んだら、コポッと打ち当たった。真中の七国の果てだろう。水は流れているのに、ナゼか通れない。というコトは。
「出雲の木俣神です。どなたか御近くに、いらっしゃいませんか。」
・・・・・・。
「大祓を執り行うため、御力添えを賜りたく、参りました。」
「隠の世、畏れ山。狐神の使い隠、ピィロです。」
「はじめまして、ピィロさま。私、出雲の木俣神です。」
そういうコトですか。暫く、お待ちください。
・・・・・・お待たせしました。大祓の儀について、御伝えします。『天つ国と根の国より御許しを得た後、また御越しください』とのこと。
「はい。確かに。」
「闇から離れているとはいえ、お気を付けて。」
「ありがとうございます。」
「で、あるから。」
大国主神。オロオロ、キョトキョト。
「はい。」
須勢理毘売、ニコリ。
「大祓には、新しい力、が・・・・・・。」
まだ、そのようなコトを?
「大国主神。木俣神を、お連れしました。」
「おぉ稻羽、よく戻った。」
ホッ。
そうか、そうか。天つ国と根の国から、御許しを得られれば隠の世が。ん、違うのか。収まるのでは?
「良ぉく分かりました。根の国へは父に、天つ国へは伯母に、御願い申し上げます。」
「それは心強い。」
須勢理毘売の御手をギュッと握り、大国主神。
「・・・・・・では、行って参ります。」
父と義母の遣り取りに、ブルッブルリ。『早く帰って、白兎を抱きしめたい』と、心から思い為さったとか。