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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
釜戸社編
59/1630

4-13 言い分を聞こう

豊田の村から長が来た。そう、長が。


「私の後添えとして、豊井の村から、十一の娘を迎えるはずでした。」


いやいや、豊田の長よ。どう見ても。


「そうか。」


祝は、姿を見せない。釜戸山の人は皆、見知っている。他の人には、わからない。守るため、隠されている。


何も、エイに限ったことではない。代々の祝は、そうして守られた。



少し離れ、両脇に犬。犬飼いも控えている。許しなく祝に近づけば、ガブッ。カプッ、ではない。ガブッ、と噛みつく。


このことは必ず、初めに伝える。知りません、聞いていません、は通らない。そもそも、祝に無体を働こうなど、許されない。



釜戸山の犬は、厳しく躾けられている。命じなくても、走る時は走り、噛みつく時は噛みつく。呻っても、無駄吠えしない。賢い犬だ。


村では尾を振り、懐いている。が、社に入れば人が、いや、犬が変わる。



「あ、あの。」


声を荒げる事なく、豊田の長は続ける。


「で、ですね。村の者だけでは、とても、とても。」


・・・・・・。


「や、山狩りと、人を。」


「続けよ。」


「できることなら、狩り人を譲って頂き・・・・・・。」


「断る。」


ピシャッと言い切った。


「なぜです!」


ウゥゥ。犬が呻る。


「ヒッ。」


甘噛みはない。そんな目だ。


「狩り人。人! 物ではない。それを、譲れ?」


静かに、低い声で。


「そ、そのような。」


「そのような。」


小さくなった。それでも続ける。


「の、後添えです。わ、私の。」


えぇ、そこぉ?


「子は守るもの。長が守らず、どうする。」


そう、まだ十一。子ですよ、子。


「ま、守りますとも。」


へぇ。


「子を後添えに。で、守ると。」


五つの幼子に言わせるか?


「もう、娘です。子ではありません。」


「十一は子だ。十二ではない。」


そう、そうだ。


「ま、まず、見習いとして。いろいろと教え込みます。そう、いろいろと。」


おいおい、何を言い出す。


「教え込む、とは。何を、いつから、どのように。」


「ハッ、それはですね。迎えた夜に。」


裁きの時は、ナガ、サカ、ササの、誰か。一人、側につく。なのに、今。


何かを感じたのだろう。三人、揃っている。凄まじい怒りがビシバシ伝わり、犬が呻る。


「ヒッ。」


再び、小さくなった。


「つまり、十一の子を、押し倒すと。」


父、伯母、従兄、ビックリ。そりゃぁ、驚きますよね。


「それが、どうして、守ることになる。」


なりません。


「何も、弄ぶわけでは。後添えです。だから。」


だから?


「許される、と。そう考えるのだな。」


「はい、その通りです。お許し頂けますね。」


「許さぬ。」


バッサリ。そして頷く、保護者たち。


「その子から、助けを求められた。釜戸社の、祝として命じる。引け。村へ戻り、追手を引かせよ。」


「助け? あ、あの娘は、ここに。」


答える気なんて、さらさらない。




「谷河の狩り人、ここへ。」


「はい。」


控えていた狩り人が、ササッと近づき、一礼。


「見聞きしたこと、話せるだけで、良い。」


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