8-72 妙案が浮かばない!
耶万での大祓。天つ国、根の国からも許しを得て、執り行われた。
人の世から六柱、隠の世から三柱。統べる地を閉ざし続けるため、大貝神も御力を揮われる。
鎮の西国での大祓。八十一柱でも、力及ばず。
そりゃそうだ。隠の世が閉ざされるコトは有っても、妖怪の墓場まで閉ざされるコトは無かった。なのに閉ざされた。それだけ深く濃い闇が、人の世に広がったのだ。
中の東国。耶万から広がった闇には、根の国の闇が混じっていた。だから御許しを得て、大祓が。
この度ブワリと広がった闇にも、根の国の闇がタップリ。なのに備えず、勢い任せに大祓を執り行った。
「・・・・・・あぁ。」
頭を抱え為さる、大国主神。
「いかが為さいますか。」
使い兎たち、オロオロ。
大国主神には、兄弟神が八十柱。それだけ御坐せば、泥沼の相続争いが・・・・・・起きなかった。なぜか。
兄弟神が大国主神を尊敬して、遠慮して、出雲の地の御支配を譲られたから。
『わぁい!』と喜べるホド、甘くない。『面倒だから、アイツに押し付けようゼ』なんてコトでもナイ。ではナゼ?
むかし昔の、その昔。兄弟神は、八上比売に心を奪われます。
『結婚するなら、会いに行かねば』と、仲良くゾロゾロ。その時、荷物持ちをさせられたのが大穴牟遅神。後の、大国主神です。
調子に乗ってオイタした、白い兎が居りました。
仕返しに毛皮を剥がされ、シクシク泣いてた兎サン。通りすがりの神サマに、治療法を教わります。神さまの仰せです、疑う事なく従いました。
塩水に身を浸し、風当たりの良い崖の上に横たわり、ジッとガマン。つまり、自ら日干しに。
自殺願望などアリマセン。痛い眩しい、何かオカシイ。でも、きっと治る。哀れな兎は、嘘を信じ続けます。
全身が罅割れ、流れていた血が見たコトのナイ模様を作って、固まっている。怖くて痛くて、ワンワン大泣き。
兎の塩干しなんて、聞いたコトありません。
聞けば嘘を真に受け、従ったのだと。オイタしたとはいえ、あまりにも気の毒。哀れな兎に治療法を教え、癒えるまで見守ります。
ナントその兎サン。兄弟神の愛しの君、八上比売の使い兎だったのです!
イジワルな神なんてキライ。兎を助けてくれた、優しい神と結婚します。めでたしメデタシとはならず、兄弟神から二度も殺されるも復活。
これがまた、スゴイ話なのよ。イロイロあって根の国へ。で、結婚してるのに素戔嗚尊の娘、須勢理毘売に一目惚れ。お父さん激怒。
バンバン与えられた試練を乗り越え、重婚。しかも結婚の条件が、須勢理毘売を正妻にするコトですよ。
出雲に戻り、根の国から逃げる時にゲットしたアイテムで、兄弟神をフルボッコ。大国主神となり平定。
「ヨシ、結婚しよう。フガッ!」
兎のハイキックと、須勢理毘売からのビンタ炸裂!
「何ですってぇ?」
正妻、須勢理毘売。とっても嫉妬深い。メラメラ。
「お忘れですか。」
使わしめ稻羽。最初の妻、八上比売の使い兎です。幾ら恩神でも、認められません。ゴゴゴッ。
「ナんデも、あリまセん。」
声をコロコロひっくり返し、オロオロなさる大国主神。
この度の事、隠の世には頼れない。よって、人の世で収めなければ。なのに妙案が浮かばない!