8-70 堂堂巡り
「消えた?」
杵築大社にて、大国主神。
「はい。生き物が残らず。」
首を垂れる、使い兎。
正確には、動物が消えました。魔物に体を奪われた妖怪が、骨ごとバリバリ美味しくネ。
「申し上げます。」
違う兎が、ピョンと参上。
「消えたのか。」
「はい。夜明け前に一つ、里が消えました。」
バケモノめ! 響灘を越え居ったか。鎮の西国から、中の西国へ?
大祓に耐えたと。いや、執り行われる前に海へ出た。とすれば、これからも。
はじめは海沿いの村、昼過ぎに滅んだ。次は山中の村、日暮れから夜に。その次は山里、夜更けに滅んだと聞く。
「・・・・・・舟。」
「大国主神?」
「はじめに滅んだ海沿いの村。そこから近い浦に、舟は。」
使い兎たち、揃ってパチクリ。えっ、どうだっけ?
「調べよ。」
「はい。」
ピョンと跳ね、タッタと浦へ。
「このまま、では。・・・・・・グッ。」
「もたぬ、ぞっ。」
祀られなくなっても、御隠れになるまで暫く。その気に御為り遊ばせば、鎮の西国ごと祓い清められる。ハズなのに、どうにも。
三柱では難しかった闇を、九柱で。それでも祓い清められず、更に三柱、三柱、三柱。それでも闇は濃く、深く広がる。
あちらこちらで執り行われている。なのに、闇に飲まれそうだ。このままではイケナイ。とはいえ、どうすれば良い。
「隠の世は。」
「未だ。」
「魂食湖は。」
山守神は御閉じ遊ばした。夜が明けて直ぐ、統べる地を全て。『二夜が二年に感じられた』とか何とか、仰ったそうな。
「隠神は。」
「一柱も。」
「なっ、なぜだ!」
イジワルしたから。耶万の大祓に加わりなさった、国つ神に。隠の世では、知られた話よ。
「アァァァァァァ。」
一柱、また一柱。力を失い御隠れに。天つ国にも根の国にも許されず、執り行われた大祓。譬えるなら節を抜いた竹筒に、水を注ぐようなモノ。
祀る人が消えた里や村、国に御坐した神とて、そんなには。よって集い、御力を揮われれる神は少なく、闇は深まるばかり。
「このままでは。」
「しかし、どうすれば。」
いつまで続くの? 堂堂巡り。