8-69 手遅れになる前に
鎮の西国で溢れた闇により、多くの神が。
限られた地で、酷く多くの雨が降る。大風も加わり、河や川から流れ出た大水で、里や村ごと流される。
地が大きく震え、崩れた山。雷が落ち、燃えた山。水を吸いきれず、流れた山。そんな山に飲み込まれ、埋まった里や村、国も。
儚くなるのは生き物だけではナイ。山が崩れれば、その山に御坐す神も。山神、木神、岩神。泉神、沢神、川神などナド、多くの神が御隠れ遊ばす。
あっちでも大祓、こっちでも大祓。それでも祓いきれず、闇が広がる。濃く深く、ドロリとした闇が。
「三柱では、どうにも。」
「なら、九柱で。」
耶万で三柱、大貝山の統べる地で三柱、閉ざし闇を止めるのに一柱、隠の世で三柱。合わせて十柱。天つ国と根の国の許しを得て、執り行われた。
少し考えれば解るハズ。三柱九柱では、どうにも為らぬと。
「天つ国へは、どのように。」
「根の国へは、どのように。」
「隠の世へは、どのように。」
どのように、どのように、どのように。・・・・・・全く分からない。こんなコトになるなら、一九社で。そう思っても悔やんでも、時は戻らない。
隠の世が閉ざされ、妖怪の墓場にも入れず、和山社へ行けない。
黄泉平坂は開いているが、根の国へ入れれば事足る。なんてコトに、なるワケがナイ。
「いっそ、魂食湖から。」
とっくに閉ざされました。どんな手を使っても力を尽くしても、隠の世へ行けません。人の世からは。
畏れ山、霧雲山、神成山の統べる地からは、行けますヨ。良山にある良村の、大蛇社を通って。
はい、その通り。強いて行っても、難しいでしょう。
「魂食山は、霧雲山の統べる地。」
「霧雲山は、中の東国に。」
「中の東国は閉ざされた。」
・・・・・・終わった。
「祓い清めなければ。」
「そうは言っても。」
少なく見積もって八十一柱。鎮の西国、丸ごと祓い清めるなら六千と、五百六十一柱。
御坐すでしょう。けれど、闇堕ちする恐れが。それでも良いと、危ないと解っていて御力添えくださる神が?
忘れちゃイケナイ。天つ国と根の国に、いただかねば。大祓の御許しを。隠の世は天つ国とも、根の国とも結んでいる。だから直ぐ、御許しを得られた。
人の世も隠の世も、同じ中つ国に在る。しかし何もかもイロイロ、大違い。
「・・・・・・大国主神。」
「中の西国は、開いている。」
「そうか。」
「出雲へ!」
偉大な国土の主の神で在らせられる、大国主神。天つ国とも根の国とも、繋がりを御持ちですが・・・・・・。