8-66 やっと解ったよ
『子は煩いし、キライだ』なんて、言っていたカツ。
早稲に戻って直ぐ、セイに抱かれたユユを見て、涙を流した。ヒトもヌエもビックリ。今でも荒っぽいし、歪んでいる。それでも少し、人当たりが良くなった。
「よぉし、捌くか。」
ユユをセイに任せ、張り切る。
「少し、良いか。」
この纏わりつくような、嫌ぁな感じ。戦か何かで、多く死ぬアレだ。
「何だ、ヌエ。聞かれちゃマズイ話か。」
「そうじゃナイ。『四人で話したい』って、ヒトが。」
四人。ヒト、ヌエ、オレ。あと一人、誰だ。ゴチャゴチャ考えても、分かんねぇモンは分かんねぇ。
「ちょっくら行ってくる。」
「ワン。」 イッテキマス。
「カナも来るのか?」
「ワン。」 ハイ。
「よく来てくれた。ありがとう。」
早稲社。社の司、シギ。
「どうだった?」
早稲の長、ヒト。
「どこの子だったんだい。」
早稲の大臣、ヌエ。何を考えているのか分からないが、早稲のためにアレコレ考え、弟を支えている。
「その話は次に。宜しいか、長。」
「そうだな。」
シギとヒトが見合い、頷いた。
「戦なら出ねぇぞ。オレが死んだら狩り人、誰が育てんだ。」
「違うんだ、カツ。落ち着いてくれ。」
「何だってんだ、ヌエ。知ってんなら、サッサと話せ。」
・・・・・・まぁ、良かったよ。戦の話じゃなくて。
安、悦、光江に大野、采の生き残りを狩る、根絶やしにする。
良い事だと思うぜ。揃ってエゲツナイからな。アレに比べりゃ早稲なんて、カワイイもんだぜ。
ニコニコしながら近づいて、根こそぎ奪う。で、奴婢にする。人として認めねぇだぁ? ふざけんな! 信じらんねぇ。
「殺すに限る。」
「なっ、待てカツ。」
「止めんな、ヒト。耶万が変わったんだ、早稲も変わる。そうだろう!」
「あぁ、その通り。でもなカツ。アレの生き残りを狩るのは、早稲じゃない。」
・・・・・・。
「ユユが育つまで、生きたいだろう?」
「生きたい。守りたい、育てたい。」
初めて見た時、驚いた。二つで死んじまった、弟にソックリで。
オレが取り上げたんだ。小っちゃくてグニグニで、鳴き声も小っちゃくてさ。『死んじまうんじゃ』って、怖かった。
戦から戻った父さんに見せたら、嬉しそうな顔して教えてくれた。『カツが小さい時に、良く似てる』って。
あの時、守るって決めたんだ。死なせちまったケド。
そっか。セツはユユで、だから死ねねぇんだ。やっと解ったよ、シゲ。ゲンもシンも悪かった。
もし会ったら、心から謝ろう。オレにも守るもの、出来たよ。チットは人に、近づけたかい?