表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
580/1582

8-64 真に、人か


「シン!」


「父さん。」



山の奥から、犬を従えた男が一人。こちらをジッと見つめて動かない。子が駆け寄り、ガバッと抱きついた。少し離れて、仔犬が尾を振っている。


子は送り届けた。コイツらを引き渡して、サッサと帰ろう。何を話しているのか、さっぱり分からん。が、待った方が良さそうだ。






せがれを助けてくださり、ありがとうございます。私はツク。中主なすの、里長さとおさです。」


早稲わさのカツだ。おさ、キツク叱ってくれ。コイツら犬をまとに、矢を射てたんだ。森で。」


あくたれの手を縛り、繋いだ縄を手渡した。スゥっと、長の顔から血の気が引く。



「何て恐ろしいコトを! まことに人か。」


雷が落ちた。震えあがる、悪たれズ。


「もう、しません。」


悪たれタギ。


「ごめんなさい。」


悪たれコガ。


「・・・・・・許してください。」


悪たれスミ。



口では何とでも言える。コイツら、チロにも同じコトを。


ヒトと同じだ。ニコニコしながらむくろの上を、ピョンピョン跳ねて喜んでいた。あの時の目だ。



オレも死んだタツも、ひどく歪んでいる。けど、あの兄弟には負けるよ。


マズイな。急いで叩き直さねぇと、知られて滅ぶぞ。中主は隠れ里。ドコに在るのか分からんが、そのうち。



ヨシ、引こう。帰ろう。この犬、貰おう。良い狩り犬になる。






「シン。里を出る前に、長と良く話し合え。チロの親なんだから。」


「はい。ありがとうございます。」


ニコッ。


「キャン。」 アリガトウゴザイマス。


シンの足元でチロ、尾をフリフリ。


「長。この犬、貰ってイイかい。」


「はい、どうぞ。」



酷い事をされた。とはいえ、子に牙をむく犬は飼えない。襲ってからでは遅い。殺せないし、里では飼えない。貰ってくれるなら喜んで。



「カツさん。いろいろ、ありがとうございました。」


そう言って、ツクが頭を下げる。


「オウ、じゃぁな。」






早稲の犬はいくさに強い。たった一匹で、十人ほど死なせる。だから真っ先に狙われる。戦場いくさばから生きて戻る犬は少なく、育てても育てても増えない。


困るんだ、狩りに連れて行きたいのに。だから要る。ヨソから貰おうと思っていたし、すんなり譲ってもらえて良かった。



「クゥン?」 ドウシタノ?



助けてくれた、救ってくれた。とっても良い人に貰われて、幸せイッパイ。傷を洗って、薬を塗ってくれた。そんなコトされたの、生まれて初めて。


死ぬまで尽くします! キュルルン。



「行こうか。」


「ワン。」 ハイ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ