8-61 言っちゃったよ、この人
「闇の力を、アチコチから感じます。」
「スオさま。それは、真なのですか。」
「真だ。アコよ、闇を恐れず、向き合うのだ。」
「はい。」
闇の力にはイロイロある。この闇は、聞いたのと違う。
オレの母は、蛇谷の祝だった。耶万に滅ぼされた小さな国の、闇の力を持って生まれた娘。良く覚えてナイけど、聞いた事がある。とても美しい人だったって。
力を持たず、生まれた嬰児。殺される筈だった。守るため、命と引き換えに。オレは闇の力で包まれ、助かった。生き残ったのも、継ぐ子になったのも全て。
母の闇は、大きく広がるもの。オレの闇は伸びる。思うように動かせれば、多くの命を救える。守れる。使えるように努めよう、そのために向き合うんだ。
闇の力は、母さんからの贈り物。この力と共に生きよう。母から貰った力だ、きっと守ってくれる。
「闇を纏う祝、か。」
ポツリと、大貝神が仰った。
「耶万のタヤは、闇を取り込む事で力を。しかし腰麻、安岐、千砂の三妖は違います。」
使わしめ土、力説。
腰麻のユキには光、会岐のフタには守り。千砂のモトには、清めの力が有った。死して力を失い、闇の力を得た。
フタとモトは望まれて、国守に。
ユキは黙って飛び出し、生き残りを探し回る。見つけて取返し、癒してから腰麻に連れ帰った。それからは妖怪の祝として、腰麻で暮らしている。
耶万に囚われ、動けなかった時にタヤと話したユキは、迷いなく奪う。フタもモトも奪えるが、中から守っている。しかしユキは、外からも守る事が出来るのだ。
人を傷つけたり、酷い扱いをする族には死を。それが憎しみを抱き、闇に飲まれたユキの考え。
「腰麻の国守は、姫だったか。」
「はい。」
「ユキとは、どうなのだ。」
不仲です。幼馴染のユイとユズを、死に追いやった張本人。隠され、守られていた人たちを、耶万に引き渡したのもアキ。そんな四姫とは、仲良く出来ません。
「ユキは腰麻を守るため、アキを。」
「生け贄に差し出すか。」
「餌に使うか、捨てるでしょう。」
「逃げるな。それでも王か。」
万十の大臣、イツ。
「辞めます。私には務まりません。」
耶万の大王、スイ。
「死ぬ気で耐えろ。それが王だ。」
氛冶の大臣、アヤ。
「そ、そんなぁ・・・・・・。」
大王になれば、好きに生きられる。そう思ったから引き受けた。嫌だったけど、引き受けた。なのに、何だよ。
ずっと、ずっと耶万の王は、そんな感じて生きていた。殺される事、多かったケドさ。奪って奪って、飽きたら捨てて。それが耶万だろ。
「悪いコトを考えている目だ。」
「うん、違い無い。」
嫌呂と悪鬼。人の姿に化け、ズバッ。
分かるヨ。だって、悪意と同じ目だモン。好きに暴れて、奪って捨てる気でしょ? イケナイなぁ、その考え。
「それが、どうした!」
言っちゃったよ、この人。