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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
575/1590

8-59 誰か教えて


良山よいやまの湧き水です。ささ、どうぞ。」


よだれを洗い流した、平良ひらの烏を持て成すオミ。


「カァ。」 アリガトウゴザイマス。


羽繕はづくろいを終え、ゴクゴク。






平良は知っていた。大蛇神おろちのかみ良村よいむらも、マルを決して渡さないと。


蛇神、大蛇おろち。はじまりの隠神で在らせられる。そのめぐし子が、良村のマル。祝の力が有ろうが無かろうが、死ぬまで離れない。それが愛し子。


良村では子は宝。死んだ親たちに代わり、慈しみ育てる。どこで生まれた誰の子でも、引き取れば皆、良村の子。大人になるまで、決して手放さない。




祝辺のおにもりは、追い詰められていた。


人の守を、統べる地のおさに。なのに戻らない。霧雲山を守るには、山の力を得るには、強い祝の力が要る。



言うまでもなく、マホに止められた。


根の国の物を口に詰められ塞がれて、隠のときに放り込まれた、あの隠の守です。凄い勢いで詰め寄られ、コンコンと諭されましたが、この通り。



烏に罪はアリマセン。隠の守に乗り移られ、飛んで来たダケ。祝辺はふりべに仕える烏です、断れません。トホホ。






「隠の守、なぜ良山へ? 霧雲山から獣谷へ飛ぶなら、通りませんよネ。」


ニコッ。


「それは・・・・・・。」



マズイ、まずいゾ。『何としても愛し子を』なんて言えば、ゴクリ。おっ、奥津城おくつきに放り込まれる。マホから聞かされた、あの。


嫌だぁぁ! こわいコワイ怖いよぉ。


どうしよう、何て言えばイイの。ねぇ、誰か教えて。って、聞けないよ。終わった。いやイヤ、諦めるのは早い。考えろ、ひねり出せ!



「羽を休めるのに、良い木が多いので。」


ニコリ。


「あぁ、聞いたコトが有ります。ははそ大木おおきですよね。」


「はい、そうです。」


ホッ、良かった。あるんだ、羽休はねやすめの木。



フッ、嘘ですね。確かに生えています。村ではなく、舟寄せの近くに。さぁて、どうしましょう。


守の狙いはマルさま。『何としても』なんて、考えているのでしょう? 強い祝の力が欲しいからって、イケマセンね。



「それはオカシイ。村の近くに、大木はナイぞ。」


ニョロッと大蛇、参上。


「なぜ、村の近くだと?」


「平良が生かされて居るのは、近づいたのが村だから。マルに近づけば、犬に嚙み殺されるだろう。」


・・・・・・。


「西で生まれたバケモノが、霧雲山に来る。山守社やまもりのやしろにも伝えたぞ。聞かなんだか?」


「なっ、それは。いえ、これにて。」


隠の守。急ぎ、祝辺へ。






「さぁ着いた。」


シンが慣れた手付きで、もやぐいに縄を掛ける。舟寄せに寄せられた舟から、マルコがタッと飛び降り、尾を振りながらタエを迎える。


「オレ、良村のアオ。掴んで。」


舟寄せで待っていたアオが、タエに手を差し伸べた。


「あ、りが、とう。」


ゆっくり舟から降り、マルコを抱き上げる。


「クゥン?」 ドウシタノ?


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