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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
574/1585

8-58 甘噛みデス


冬を越すため、みんな大忙し。どの倉もキチンと整え、納め入れられた食べ物でいっぱい。村の近くにあるほらの中にも、しっかり納められている。


まきは村を囲うように、ズラッ。セッセと割っては、並べて積む。良山よいやまは冷えるから、たっぷり備えなければ。そんなワケで、山の中にもキレイに並べられている。




「ホォ。これは、これは。」


ウットリなさる、大実神おおみのかみ


「大きくなりましたね。」



ずっと昔、この山に人が入った。泉の回りを切り開き、棲みつき、大実おおみと呼ばれるように。


みつみ、子が生まれ、賑やかになった。ゆったりと時が流れ、この幸せがいつまでも。



続かなかった。


春になっても寒さが続き、雨が降らず困り果てた時、嵐が全てを薙ぎ倒す。蓄えが尽き、食べ物に困り、山の幸を求めて争いだした。



生きるため一人、また一人。アッという間に、山から人が消えた。あんなに賑やかだったのに、あんなに豊かだったのに、もう誰も。




シゲが来た時、嬉しくて飛び上がった。


切り開かれた地には若木が根を下ろし、枝葉が揺れている。泉はコンコンと湧き続け、涸れる事はない。少し手を加えれば、しっかり暮らせる。だから頼む。


朝になり、ボソッと言われた。『こりゃ、棲めないな』と。そうだ、この山は冷える。なぜか、他の山より冷えるのだ。小さいがで湯も出るのに、とても冷える。



大実神が御隠れ遊ばすまでは、この山で。諦めかけた時、人が越してきた。早稲わさから人が、この山に。子に犬、かけまで。


釜戸の祝から認められ、新しく作られた村。早稲の生き残りが、残された子のために作った村。『良い村に』と願い、良村よいむらと名付けられた。




「そろそろ酒を。」


やまとの神は、御酒好き。


「確か、サルナシで。」


使わしめオミ。遠くを見つめ、ポツリ。


「米のが良いのだ、米の。」


大実神、力説。



「酒なら、霧雲山から。」


平良ひらに乗ったおにもり、ニッコリ。


「気持ちだけ、いだたきます。」


オミがズバッと、断った。


「なっ、なんと。」


「大実神、やしろへ。」


「いや、しかし。」


「社へ。」



オミを怒らせてはイケナイ。社を出られては困る。にしても、少しくらい・・・・・・。チラッ。


わわっ、分かった。そんな目で見るでナイ。戻ろう、大実社おおみのやしろへ。




「祝辺の守、こちらへ。どうぞ。」


良村の後見うしろみは、釜戸山である。霧雲山ではナイ。


「いえ、私は。」


ココに来たのは、めぐし子の気を引くため。だから村へって、アレェ?


「ホウホ、ホヒハヘ。」 


離れようとした、その時。パクッ。勿論もちろん、甘嚙みデス。やまいぬおおかみと違って、狙った獲物は逃さない。






犲も狼も同じ? いいえ。イヌはイヌでも大違い。


犲こと、ニホンオオカミ。狩りの名手で、一匹でも果敢に攻めます。諦めません、狩るまでは。それが犲。



対して狼は最高のハンターなのに、諦めが早い。


リーダー自ら考案した作戦が失敗しそうになると、作戦変更したくなり、後日再挑戦。策士策に溺れる! それが狼。


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