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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
573/1583

8-57 あれれ?


南の動きがアヤシイ。


耶万やまは落ち着いたが、耶万に滅ぼされた国の多くが、まだ荒れている。高平たかひらの狩頭が言っていた。『纏わりつくような、イヤな感じがする』と。



兎和野うわのでも聞いた。耶万に仕掛けて負けた国、その多くが危ないと。


今は万十まと氛冶ふやから大臣おおおみが来て、耶万を支えている。居なくなれば、喜んで仕掛けるだろう。




「なぁシゲ。早稲わさの動き、どう思う。」


「懲りたんだろう、引いた。霧雲山の統べる地には攻めない、仕掛けない。南で生きると。」



釜戸山から、ヌエとカツが戻った。それまで早稲を纏めていたのは、おさのヒト。カツの妻セイ。外との付き合いはヒト、内を仕切ったのはセイ。


クセの強い二人は手を組み、玉置と三鶴に荒らされた早稲を守った。



立て直しに要るのは、許しと食べ物。風見かぜみを巻き込み、北の地から引く事で、乱雲山からの許しを。いくさを仕掛けず田畑を耕し、植え育てる事で、食べ物を得た。



カツは、あたたかく迎えられた。ヌエは違う。早稲の皆から『カツをそそのかした、悪者わるものだ』と思われていた。それを変えたのがセイ。


あの長の娘で、大人になって直ぐ、早稲で生きる事を選んだ。そのセイが言ったのだ。『釜戸に裁かれ罰を受け、罪を償い戻った』と。『カツと共に、生まれ変わった。私は信じる』と。




「早稲と風見が引いても、耶万は。」


「中から崩れる。それでも小さく。いや、そうか。」


シンが考え込む。



耶万が荒れても海まで行ける。暴れ川が通れなくても、遠回りだが鳥の川や、白渦川からも。


南へは行けるが、何が起こるか分からない。センはもり、ノリは毒針使い。イザとなれば戦えるが、子を守りながら戦うのは、幾ら何でも難しい。



「犬、増やすか。」


「良いと思う。」






「タエ。お願いだから、食べておくれ。」


ブツブツブツ、ブツブツ、ブツブツブツ。


「シノ、今は待とう。」


「はい。」


茅野の禰宜ねぎが狩頭の妻、シノを連れ出した。



タエは今、守るために戦っている。恐ろしい末を変えるため、えらんで選んで確かめて。血を吐く思いで、戦っているのだ。


眉間に寄せられたしわ、パチパチ動く目、荒い息遣い。頭をブンブン振りながら、こぶしで叩く事もある。こんなに小さい子を、ここまで。



「ネネさま。タエは、あの子は。」


「迎えが来ます。それまで、見守りましょう。」



少し前、平良ひらの烏が飛んで来た。『タエに話がある』と。『今は寝込んでいるので、会わせられない』と追い返したが、また来るだろう。



祝辺はふりべには渡さない。落ち着くまで茅野で預かり、良村よいむらを経て野呂のろへ。そう決まっている。


やっとポツポツ話せるようになったのに、祝辺へ? とんでもない!






「こんにちは、ネネさま。タエを迎えに来ました。」


「こんにちは、シンさん。どうぞ、こちらへ。」


「キャ、キャン。」 ボクモ、イイデスカ。



タエがバッと立ち上がり、駆け出した。マルコを抱き上げ、ギュッ。それから、キョロキョロ。



「マルなら村だよ。さぁ、行こうか。」


マルコを抱いたまま、コクンと頷いた。


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