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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
572/1583

8-56 揺れるとは聞いていたが


つわものを集めよ?』 集まるワケが無い。


耶万やまにはバケモノが居る。仕掛ければ、必ず殺される。戻れるのは、たった一人。誰だって死ぬのは嫌だ。遠く離れた耶万より、近くの国に仕掛けろよ。



『奪わなけりゃ、冬は越せない?』


まぁ、あまり実らなかった。雨は降ったし、日も照った。なのに少なかった。






「恐れながら申し上げます。琅邪王ろうやのきみ、兵と共に耶万へ。さすれば兵も勇み立ち、弾みがつくでしょう。」



儺升粒なしょぶに言われ、琅邪王は怯む。いくさは好きだが、死にたくない。それが本音。


『代わりにせがれを』と言いかけ、める。あれだけ居たのに、残った倅は儺升粒だけ。残りは死んだり、殺したり。



マズイ。コレを送れば、身代わりが。戦ではなく、裏切られ死ぬなど決して。となれば、いや。



「それは良い考えですね。」


「王と共に戦えるとは、羨ましい。」


「兵たちも喜びます。」



おみたちが声を張り上げ、見つめる。ここで『行かぬ』と言えば、どうなる。えぇい、儺升粒め! はかったな。






「整いました。さぁ、この中に。」


卑呼男ひこおから手渡されたのは、大きな皮袋。


「こっ、コレに?」


「はい。」



儺升粒は父、琅邪王を耶万へ送るため、酒を勧めて酔い潰した。夜が明けたら浜へ連れ出し、舟に乗せる。今のトコロ、上手うまく運んでいる。


卑呼女ひこめは祈りを捧げるため、やしろに籠った。空の声が聞こえるなんて大ウソ。雨が降る少し前になると、足が痛むのだ。他に知っているのは弟、卑呼男だけ。



三人が力を合わせ、演じる。儺升粒は、兄のかたきを討つため。卑呼姉弟は、国を一つにするために。



「夜が明けるまでに入り、隠れてください。琅邪ろうやから向こう岸に着くまで、かなり揺れます。舟の中では、飲み食いを控えてください。」



中の西国にしくにに着くまで、お預け。しづめの西国を出るには、他に手は無い。



「分かった。」


「では、私はここで。そうそう。言い付け、守ってくださいね。」



もし儺升粒たちを食らったら、海は渡れない。夜に動けば射殺いころされ、朝に動けば焼け死ぬ。そう言われた。


あの目、本気だ。だからアンナもマリィも信じた。卑呼姉弟には、特別な力が有ると。



海さえ渡れば食い放題。ソレは扨置さておき、エンを連れ帰らなければ。大王の命は絶対。任務遂行のため、今は控えよう。



「分かっている。」


「では、さようなら。」






夜明け前。袋に入り、戦の具に隠れた。舟底には日の光が入らない。そのうち待ちくたびれ、ウトウト。


琅邪王が兵を引き連れ、浜に来た。ガヤガヤ騒がしくなり、目を覚ます。用意された舟は二隻。この舟に、王が乗るらしい。



ズズズ、ザッバァン。



勢い良く海へ。揺れるとは聞いていたが、グワッと乗り上げグンと下り、横にも揺れる。コレはヒドイ。


ウッ。気持ち、悪い。吐きそう。


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