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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
570/1584

8-54 敵討ちは計画的に


琅邪王ろうやのきみ、お考え直しください。」


「えぇい、うるさい。耶万やまを落とすなら今だ。」


「父上!」


「王と呼べ!」



響灘ひびきなだを望む地に、琅邪ろうやの国が在る。父は戦好いくさずきで、儺国なのくにでは負け知らず。


気が緩んでいたのだろう。仕掛けた耶万に攻められ、あっさり負けた。あれから幾度いくたび、仕掛けたか。



中の東国ひがしくにまで舟で攻め入り、戻るのは一人。


『バケモノがいる』だの『仕掛ければ殺される』だの『伝えるために戻された』だの、ブツブツと繰り返し、怯え死ぬ。



もう諦めてくれ、頼む。心の中で叫んでも、届くワケがナイ。分かっているのに言えない。上の兄と話し合い、何としても止めようと決めた。



「耶万に仕掛けても勝てません。いくさより国を、民の幸せを考えてください。」


「黙れ、儺升粒なしょぶ。」


「黙りません。グハッ。」


父王に腹を蹴られ、うずくまる。



「耶万に送るつわものなど、琅邪には居りません。琅邪王、ご覧ください。琅邪の地を、民の暮らしを。」


「ええい、黙れ黙れ。退け!」


「退きません。ヴッ。」


ボタッ、ボタボタボタ。



おみとして、せがれとして怯まず、いさめた。その末がコレですか。父に刺し殺されるとは、思いませんでした。


腹を貫いた剣を引き抜き、シュッと一振り。眉一つ動かさず、鼻で笑って見下して。はずみでも手違いでも無く、殺す気で刺したんだ。・・・・・・倅を。



ごめん、情けない兄で。おまえ一人残して死ぬのは、とても辛い。あぁ神様、お願いです。弟を、儺升粒をお守りください。どうか、どうかお願いします。



「兄上ぇぇ!」



嘘だウソだ、悪い夢だ。あぁ兄上、お願いです。目を開けて!


血が止まらない。誰か、誰か助けて。兄は良い人です。民を導き、守り、慈しめる。そういう人なんです。だから、だから、お助けください。神様!






「ゆる、さ、ない。こ、ろす。琅邪王、殺す。」


「いけません、儺升粒さま。」


卑呼男ひこお、さま?」


かたきを討っても、死んだ人は戻りません。」


「その通りです。」


卑呼女ひこめさま。」


「儺升粒さま。琅邪を良い国にと、おっしゃいましたね。」



そうだ。兄と話し合った、この国の末を。皆が笑って暮らせる国にしよう。そう、決めたじゃないか。二人で力を合わせて、守ろうって・・・・・・。



「わぁぁぁぁぁ。」



儺升粒さま。あなたが殺さなくても、殺せますよ。王をおだてて、耶万で戦う気を起こさせる。ただ、それだけ。


そうそう、躍らせるなら皆の前で。そうすれば引けません。



戦好きは要りません。皆の暮らしと幸せを守るため、力を合わせましょう。この頃ずっと、海が荒れています。けれど夜明けから昼まで、静まります。


『少しでも早く、耶万へ送りたい』そう願う王は、私を呼ぶでしょう。その時です。励まし、言の葉を添えて助け、踏み出させる。そうすれば必ず。



卑呼姉弟の言葉が、儺升粒の心に深く、深く刺さった。


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