8-52 新魔 対策会議
中の東国、その西端を治める三柱。統べる地を守るため、一九社で結び為さった。よって閉ざしても神のみ、行き来できる。議るために。
「困った。」
斑毛山より、斑神。
「ほんに。」
津久間より、津久間神。
「困る。」
畏れ山より、火炎神。
中つ国で開いているのは鎮の西国、中の西国、真中の七国。あちらで収めて頂きたいが、どうにも。
人と妖怪の合いの子が、アンリエヌの魔物を食らった。来たのは二人。化け王ではなく、大王の臣らしい。頭を乗っ取り、共食いにより生まれた。強いのが。
狙いは霧雲山。まだ西国だが、必ず来る。この度の事、化け王の力添えは望めない。
霧雲山の統べる地は、中の東国の真中。霧雲山に入れば、我らが通したコトに。
先読の力を持つ隠の守が、その末を見た。先見の力を持つ守は、まだ何も。つまり、一年から三年ほど経てば通る。このまま何もせず、過ごせばの話。
「隠の世は、更に強めた。」
「押し切って進むのは、難しかろう。」
「諦め、引けば良いが。」
人の世。鎮の西国で溢れた闇は、恐ろしく深く濃い。隠神が、猫神が倒れ臥されたのだ。きっと耶万から溢れた闇よりドロッドロの、ギットギトに違い無い。
「鎮の西国に居るソレは、響灘を。」
「いや、まだ。」
「しかし、そのうちに。」
鎮の西国と中の西国、その間にある海。それが響灘。浅い海だが流れが早い。加えて強い風が吹き、波が高い。舟飲みの海として知られる。
「鎮の西国では、執り行わぬのか。」
「祓うにも三柱、九柱では。」
「八十一柱。その気になれば、なんとでも。」
然は問屋が卸さない。神望が有るとか無いとか、そういう話でもナイ。
多くの人が命を奪われ、里や村が滅んだ。元より戦好き。兵を失えば、国が傾く。戦に狂い、滅んだ国も。
山神や水神とは違い、人の思いから現れ出られた神は、御隠れ遊ばす。望まれなくナレバ忘れられ、御力を失い為さる。
「祓えるのだろうか。」
「難しかろう。」
「妖怪の国守なら・・・・・・。」
妖怪の国守に求められるのは、他とは違う強さ。社の者として、守るために奪う。人の命、隠の魂。妖怪からは、その二つを。
攻めず仕掛けず、真っ先に戦う。弱くても戦い続ける。負けて死ねない、勝って死ぬ。それが務め。増やしたくても、なかなか増やせない。
火炎社にて、夜通し続いた神議り。気付けば夕暮れ、三柱ゲッソリ。少し休まれ、朝まで議られる。
結果、決まった。禍が海では無く、陸を東へ。その時は西端に、妖怪の国守を全て集め、支えると。