8-48 恐れていた事が
「ミャァ!」
昏睡状態だった猫神。寝床から飛び起き、シュタッ。
「猫神様。」
使い隠、揃ってウルウル。
「急ぎ、和山社へ。」
キュルルゥゥ。・・・・・・ポッ。
デキル猫たち、そっと目配せ。サッと用意されたのは、お腹に優しい猫飯。
新鮮な魚を石包丁で細かく叩き、若布を加えて、更に細かく叩く。若布の量は、控え目に。
腹が減っては戦が出来ぬ。戦じゃニャイけど、腹拵え。
三日三晩、飲まず食わず。お腹と背中が、くっついちゃう。パクパク、モグモグ。ゴックン。うぅん、美味しい。
「恐れていた事が。」
「ミツさま?」
隠の継ぐ子、両葉。パチクリ、キョトン。
餓死した幼子の魂が一つとなり、妖怪に。二形のため、見世物にされる。檻に入れられていたが、隠の祝ミツに引き取られ、継ぐ子になった。
生みの親の顔なんて分からない、覚えてナイ。けれど笑いながら己を虐げ続けた、養い親の顔ならハッキリと覚えている。与えられるのは痛みと、濁った水だけ。
食べ物が与えられるのは、月に一度か二度。
いつも腹ペコ。だから、貪るように食べた。檻に叩きつけられる、傷んだ木の実や魚を。腹を瀉すと解っていても、口にした。
「私が良いと言うまで、社から出てはイケマセン。」
「はい。」
ニコッ。
噂は聞いていた。隠の世の外れに、男で女の子が居ると。扱いは良いとか、悪いとは思わないとかイロイロ。
外れと言っても、隠の世は広い。気になっていたので、人の世から戻る度、探した。
ある日、人集りを見つける。その先に檻が見えた。直ぐに養い親を闇で串刺しにし、迫る。『死にたくなければ寄越せ』と。
『差し上げますので、お助けください』と平伏され、証を取ってから連れ帰った。
あれから幾年、経ったのだろう。健やかになって、背もグッと伸びた。この子は私の子。産んでないけど、私の愛し子。
「人の世で、何か起きたのですか。」
両葉に問われ、ニッコリ。
「魔物がね。人と妖怪の合いの子に、パクッと。」
チョッピリ声色を変え、ミツが答える。
パクッなんて、かわいいモンじゃない。頭から骨ごと、バリバリ食われた。
アンリエヌで映像を見ていたエド大王と、王妹ウィ大臣。血走った妖怪の顔面アップ、アーンからの闇。映像が途切れた瞬間、揃って絶叫。
飛び込んできた王弟、ジャド大臣とベン大臣。話を聞いたダケで真っ青。仲良く頭を抱える、四兄妹。
「ミツさま。その魔物、化け王の?」
「いいえ。大王の使いよ。」
もし、化け王の臣下が食われたら? 才の全てを使って、滅ぼすでしょう。即断即決! 前例もアリマス。
民を故意に傷つけたら、首チョンよ。統治者とか、為政者の。
「では、戦には。」
「なりません。」
ニコッ。