8-47 魂の融合
鎮の西国は今、荒れている。
人と妖怪の合いの子が、はじめに狙ったのが祝。次に狙ったのは、使わしめ。
どんなに強い力を生まれ持っても、人は人。決して勝てない。あっさり殺され、頭からバリバリごっくん。
祝を食らっても、祝の力は得られない。しかし社憑きや、使わしめは少し違う。力は得られないが、許しを得なければ入れない。そんな所に近づけた。
里や村から人が消え、滅んだ。祀る人が居なければ、御隠れ遊ばす。ゆっくりと、時をかけて。
大国は何とか残っているが、国は幾つか。国が一つ滅びれば、その近くの国も滅ぶ。引き摺られるようにズルズルと、次から次に及ぶ禍。
早く止めなければ!
どうすれば良い。どうすれば止められる。隠の世は閉じられ、助けを求められない。人の世でも、似たようなモノ。
今、開いているのは三つ。鎮の西国、中の西国、真中の七国。他は全て、閉ざされた。
「大蛇神に、御願い申し上げよう。」
「して、どのように。」
隠の世に入れなければ、和山社へ行けない。妖怪の墓場も、シッカリと閉ざされている。
中の東国、その真中に在る三大霊山。畏れ山、霧雲山、神成山の守りは固い。中でも霧雲三大霊山。霧雲山、乱雲山、天霧山の守りは、とても固い。
牙の滝も良山も、霧雲山の統べる地に在る。どう前向きに考えても、伺えない。
「根の国から、お伺いしては。」
「黄泉平坂も、閉ざされたまま。」
中つ国と根の国の境は、他にもアチコチに在る。水の流れに身を任せれば、そのうちに。海でも川でも、同じコト。
しかし、今は違う。根の国へ行くには、死ぬより他ない。行けるが、戻れないのだ。大社や一九社で、イジワルしなければ・・・・・・。
「出雲、杵築大社。」
「大国主神ならば。」
パァァ。
出雲は、中の西国に在る。開いているので伺える。多くの神が、使わしめを送り出した。しかし、ほとんど戻らない。
人と妖怪の合いの子に見つかり、戦い、敗れた。頭から食われ、腹の中へ。そうして魔物は動き回るコトなく、強い力を手に入れる。
「マリィ!」
「お逃げください、ア」
アンナの目の前で、マリィが。
「ギャァァァ。」
アンリエヌから、ずっと一緒だった。東の果ての、小さな島まで私たち。こんな死に方するために、苦労して来たの? 嘘でしょう。悪い夢よね、コレ。
「死ねるかぁあ!」
アンナは一人、戦った。しかし惨敗。元より、多勢に無勢。嬲り殺され、闇に染まる。
魔物の腹の中で、アンナとマリィの魂が融合。その結果、死んだ祝の魂を取り込む事に成功した。