4-10 お、終わったぁ
「な、なんと。それは違い、ないのか。」
社へ続く道を歩いていたら、聞こえてしまった。
「お、はようございます。シロさま。」
「おはよう。で、違いないのか。」
「何が、でしょうか。」
「山守が、祝辺を攻めたと。」
「はい。谷河の狩り人から、聞きました。」
「で、祝辺の守は。守は。」
「さぁ。」
霧雲山は、大きな力で守られている。許しなく山に入れば、必ず死んでしまう。とても恐ろしい山だ。
釜戸山だって、許しなく山に入れない。かたく禁じている。山で暮らす人たちが、しっかり守っている。そう、人が守っている。
霧雲山は違う。
頂きから、大きな力で。祝辺に眠る、魂とか、魂とか、魂とかが守っている。
もし、守が倒れたら? 山を守る、大きな、ち、力が。き、霧雲山の、そ、外まで。
怖い。怖すぎる。釜戸山から霧雲山まで、離れている。離れているが、灰は届く。と、いうことは、来るのか。き、来てしまうのか?
「エイさま。」
た、た、助けて。って、あれ?
「シロさま、おはようございます。」
何だ、祝人か。ん?
「ササ、おはよう。エイさまは。」
「もう、しばらく。」
寝坊かぁ。
「おはようございます。シロさま。」
ヒッ、サカ。
「おはよう、サカ。エイさまは。」
怖いです。そんな目で見ないで。
「もう、しばらく。シロさま、お忘れですか。」
な、何を?
「エイは幼子。村から社まで、時がかかる。だから。」
「そ、そうでした。」
いつも、ナガが抱えて来るじゃないか。早く来られるだろう。いくら何でも、甘すぎやしないか。って、すいません。
「良いのですよ。他の、誰かが、祝になっても。あの子は五つ。私たちは良いのです。むしろ。」
「い、いえ。エイさまにしか。エイさまにぃ。」
冷や汗が、滝のように流れた。ど、どうする。サカは祝女だが、エイさまの伯母。ササは従兄。
このやりとりを、ナガが知ったら。お、終わったぁ。エイさまの他に、祝が務まる者は、いない。
「祝人の前に、父だ。」
ヒィッ。
「どうされました。シロさま。」
サ、ササ。キョロキョロ、キョロッ。
「おはようございます。シロさま。」
禰宜になってから、遠くに感じるんだよな。昔は、さ。伯父さま、伯父さまって。あんなに懐いてたのに。今じゃ、こう。どうなってるの?
「おはようございます。ロクさま。」
「おはよう、ササ。」
わぁ、キラキラしてる。
「社の司、何かあったのですか。」
「ん。」
「社に来るなり、エイさま。と、叫んだとか。」
あっ、そうだ。
「祝辺が、山守に攻められたらしい。」
ああ、それで。
「大きな力が、霧雲山の外へ。そうお考えですか。」
おっ伯父の、こっ心がっ、読めるのか。
「そうは、なりませんよ。攻めはした。が、頂きの前で崩れた。そう聞きました。そもそも、強い力がなければ、祝辺の守は務まらない。負けるわけないでしょう。」
ニコリ。




