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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
557/1583

8-41 帰りましょう


「そうか、まことか。」


ヨシ、殺そう。


「はい。ですから、お助け」


シュパッ。ゴロン。



顔は笑っているが、目は笑ってイナイ。そんなユキを見て、虫螻むしけらどもは悟る。殺されると。



「どこから来た。」


「ヒィィ!」


「同じコトを言わせるな。サッサと答えろ。」



刺し殺さなかったダケ。『殺さない』とは、言ってナイ。黙っていれば刺し殺され、答えれば切り殺される。ただ、ソレだけのコト。



「たす、けて。お助け、ください。死にたくない。」


「どこから。」


やすから来ました。」



ニコニコしながら近づき、根こそぎ奪う。生き物は捕らえ、殺さず売る。


他の地の生き物は、すべてモノ。攫っても襲っても、奪っても穢しても許される。そう信じて疑わない。それが安。



「他は。」


「皆、安の生き残りです。」



耶万やまに滅ぼされた国、安。他は気の毒に思ったが、安は滅んで良かった。心の底から、そう思った。なのに居たのか、生き残りが。



「お助け」


シュパァァ。ゴロゴロ、ゴロン。



残らず切り殺し、直ぐに集めた。抜けた魂を切り刻み、闇で作った壺に入れる。喜べ、償わせてやる。多くの女を苦しめた罰だ。



死ねば終わると思うな。殺してくれと願うまで、幾度いくたびでも繰り返す。むくろは残らず、森の中からコチラを伺う獣に与えた。刻んだ魂は、壺の中で。クックック。


この中には、幾万ものやいばが仕込んである。死んでも痛みを感じるよう、ちゃんと残した。さぁ歌え、踊れ。グサグサ突き刺され、ブスブス貫かれ、悶え苦しめ!






安の虫螻の所為せいで、待たせてしまった。サッと闇で包んで助け出したけど、生きてるわよね。



「覚えてますか。私、ユキです。」


「・・・・・・は、ふり。」


「はい。腰麻社こしまのやしろの祝だった、ユキです。」


「ゆき、さ、ま。」



まだ幼いのに、あざだらけ傷だらけ。それに、こんなにせて。きっと食べさせてもらえず、草を食べて命を繋いだのね。



「さぁ、どうぞ。ゆっくり、おあがりなさい。」



団子を差し出すと、ツゥっと涙を流した。小さく頷き、ゆっくりと口を開け、パクッ。モグモグしながら、涙をポロポロ。



言の葉が、少ししか出ない。けた頬、ギョロリとした目。病なら治る。けれど、心の傷は治せない。どれだけ辛く、苦しい思いを。


許せない。アキの所為で! あの子が言い付けを破らなければ、こんな事には。



「帰りましょう。」


「・・・・・・か、えり、たい。」


「えぇ。帰りましょう、腰麻に。」


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