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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
556/1586

8-40 女の敵


「・・・・・・さ、ま。」


「間に合った。」



ユキさま? ユキさまだ。角、だよね。きっと良い妖怪だ、白く光ってる。


あったかい。あんなに重かった体が、ポワポワする。アチコチ痛かったのに、痛くナイよ。のどもスッキリ。頭は少し、ガンガンするけど。



ココどこ? まぁ、いっか。眠いけど、寝たら死んじゃう。目を開けなきゃ。でもまぶたが・・・・・・重い。






「ヨシ! 次。全て助ける、助けてみせる。」



正妃むかいめやしろの皆が、命を懸けて守った命。ユイとユズが守った命。


私が妖怪になったのは、そんな命を救うため。腰麻こしまの生き残りを救うため、生かされた。きっと。



腰麻神こしまのかみ田鶴たづさまも、とても驚き為さった。でもおっしゃったわ。『おにでも妖怪でも、ユキはユキだ』と。『思うように生きなさい』と。



「ユキさま。あちらにも一人、腰麻の子が。」


「ありがとう、ユラ。」



妖怪に殺された隠の魂が集まり、妖怪になった。光の中には出られない。だから、地中か影を移動する。ユキの抱いた憎しみに触れ、蛇の姿に。


ユラユラしているので、ユラと名付けられた。






「祝ぃ! 見つけたぞ。捕まえろぉ。」


「ヲォォォ。」



ムサクルシイのがワラワラと集まり、ユキを囲む。ギラギラした目は節穴か? 角も牙も、見えナイらしい。



確かに、闇の力を持つ祝。死して妖怪と化したが、腰麻社こしまのやしろの祝である。神の御許しを得た、妖怪の祝。人でなく、妖怪。


ゴチャゴチャと汚らしいのが束になって掛かっても、サッと一振ひとふり



闇を右の手に集め、スッと伸ばす。石器のように鋭く、むちのようにしなうソレが、虫螻むしけらどもをぎ倒す。






「答えろ。なぜ祝を狙う。」


スゥっと細められた目が、赤く光る。


「ヒィィ。」


ぞくの頭が、驚いてった。


「刺し殺されたくなければ、答えろ。」


「ぬ、奴婢ぬひに。耶万やまの、お、大王おおきみに。」


ガタガタ、ガタガタガタ。



愚かだ。耶万の大王は、タヤさまに殺された。ずっと昔、耶万に殺された祝。闇の力を取り込んで、光の力を押さえつけ、戦った祝。大祓おおはらえにより、旅立たれた。



耶万の新しい王は、水手かこだった男。潮の流れが分かり、嵐を乗り越えるてだてを持つが、おかでは弱い。


女をモノ扱いするが、強いのに媚びるダケの、弱い男だと聞く。



それに有り得ない。耶万が落ち着くまで、支える事になった万十まと氛冶ふやも、女を敬いあがめる。


隠のときから遣わされた妖怪は、良那らなにいる継ぐ子が戻るまで、耶万に残られる。



女を、祝を? ないナイ。コイツら知らぬのか。耶万の男は、いや男が皆、おのと同じだと考えて。


そうなら生かしてオケナイ。ヨシ、殺そう。女の敵は、女が討つ。




「誰に頼まれた。」


「や、耶万の。お、大臣おおおみと。やや、社の、司に。」


どれも死んだ。殺された。


まことか。」


「ハイィッ、真ですぅ。」


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