表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
555/1587

8-39 もっと早く、得ていれば


「か、えり、たい。」


四姫よつひめが言い付けを守っていれば、こんな思い、しなくて済んだのに。



隠れ家に詰め込まれて、ドンヨリした気持ちになった。でも解っていた。


どんなに腰麻こしまが強くても、いくさに負ければ奴婢ぬひになるって。若い男は戦場いくさばに放り込まれ、女は穢され、子は売られる。それが戦。



腰麻は耶万やまに負けた。だから子と、はらんだ女が集められ、隠され守られたんだ。腰麻を残すため、次に繋ぐため。なのに、なのにアキは!



「ユイ、さ、ま。」


とっても優しくて、美しい姫さま。賢くて、心が強くて、大好きな姫さま。



言い付けを破ったアキが、王の家に忍び込んだ。見つかって逃げ出し、戻って来た。敵を引き連れて。隠れ家に飛び込んできて、ユイさまを身代わりに。


なんでだよ、死ぬならアキだろう。言い付けを破って、みんなを。みんなを・・・・・・。



「ユズ、さ、ま。」


とっても優しくて、美しいひこさま。賢くて、姉のユイさまが大好きな彦さま。



ユイさまが皆を守るため、命を。


ユズさまが泣きながらおっしゃった。『私がおとりになるから、森に逃げなさい』って。それで、それで飛び出して叫んだ。『私は腰麻の二彦ひのひこ、ユズだ。腰麻の者に、手を出すな』って。


みんな泣きながら逃げた。声が出ないように口を押さえて、涙をボロボロ流しながら逃げた。なのにアキが言ったんだ。『子や娘が逃げる、逃げ出した』って。



正妃むかいめは仰った。『耶万との戦、勝つのは難しい』と。なのに王は聞かなかった。腰麻の事なんて考えず、戦を仕掛けた。守るためじゃない。ただ、戦が好きなんだ。



王も側女そばめも、側女の子もアテにならなかった。でも正妃と正妃の子は、腰麻の皆を守ってくださった。生きるのに要る物を、他から集めてくださった。


他の国へ行きたいと思う子を、逃がしてくださった。






「シッカリして! 目を開けて、お願い。」


肩を揺すっても、ピクリともしない。遅かった。もっと早く見つけていれば、助けられたのに。



私も隠れ家に居た。光の力を生まれ持つ、継ぐ子だから。次の祝だから。


『残る』って言ったら、『腰麻のために生きなさい』って。ユイとユズに助けられ、森に逃げた。なのに、なのにアキめ! 皆を売りやがった。



アイツ指差して、言いやがった。『祝が逃げた』って。私は助けたかった。だから皆を逃がそうと、囮に。なのに、なのにアイツ。『アッチにも逃げた』って。



みんな捕まった。縛られて、バラバラに売り飛ばされた。でも私だけ、扱いが違った。耶万に、大王おおきみの前に突き出されて、皆の前で穢された。


力を得るために、祝の力を強める? ナニ言ってんの。そんな力、祝には無い。なのに信じず聞き入れず、酷いコトをイロイロと。


アチコチから集められた祝女はふりめは、アチコチから集められた祝人はふりとに。




あの目、薬を飲まされたんだ。ドヨンとして、獣みたいで怖かった。『めて』って言っても通じない。言の葉が分からなく、なったんだ。それで。



死にかけた時、憎しみを抱いた。その時、清らな光に導かれ、おにに。


暴れる妖怪から隠を守るため、殺した。殺して殺して、気が付いたら妖怪になっていた。



光の力は失ったけど、闇の力を得たんだ。やいばに変えて戦える。


あの時は、守る力が欲しかった。だけど今は救う力、癒す力が欲しい・・・・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ