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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
554/1587

8-38 絶対なんて、ない


耶万神やまのかみ。少し、御休みください。」


「ありがとう、マノ。」



大貝社おおかいのやしろから戻ったマノは、包み隠さず申し上げた。大貝山の統べる地で、人と妖怪の合いの子が生まれると。今は耐えきれず。しかし、そのうちに。


人と同じように生まれ、母が干乾ひからびるまで吸い尽くす。むくろを食らい、人を襲って吸い尽くし、また骸を食らう。その繰り返し。






しづめ西国にしくにや中の西国、真中まなか七国ななくにでも里や村、滅んだ国まで有るとか無いとか。


おにときは閉ざされ、人の世でも閉ざす地が出た。今も開いているのは、西国と真中の七国。他は全て、閉ざされている。



国守が居る地は何とか。居なくても狩り人かきこり、釣り人が居れば。社があっても、神が御坐しても、使わしめが隠でも守れない。命を奪えば、闇に。



魂食湖たまくらいのみずうみが閉じる前、隠の世で暮らす妖怪が言った。人の世で、大きないくさが始まると。


中つ国が荒れ、纏めるために力を求めた人が、国を滅ぼす。



戦、戦、戦。多くの血が流れ、多くの国が滅び、とても大きな国になる。その王が戦を仕掛け、他を攻め滅ぼす。そうして出来た大国おおくにが、大国を飲み込む。




魂食湖を二夜ふたよだけ残したのは、遠くまで調べに行った妖怪のため。大蛇神おろちのかみは隠の世を守るためなら、何だって為さる。


人の世が滅んでも、涼しい顔を為さるだろう。



守りたい人だけ、隠の世に。他は見捨てる。人の世の事は人の世で、隠の世の事は隠の世で。それが決まり。



霧雲山の統べる地は、魂食湖が閉ざされるまで待った。噂によれば山守神やまもりのかみ、ベロンベロンだったトカ。


そりゃ神だって、恐ろしいモノは恐ろしい。酒に逃げたり、溺れたくもなる。






「マノ。耶万やまでも、生まれるだろうか。」


「はい。考えられるのは七つ。うね、伊東、光江、悦に大野、久本、安。うち采、大野、悦、安、光江から、多く生まれると思います。」



他にもアヤシイ国はある。しかし国守か、狩り人や釣り人が居る。生れて直ぐ、あやめるだろう。それでも守り切れるかどうか。


統べる地が閉ざされても、人は動ける。西国や真中の七国から、人と妖怪の合いの子が来る事はナイが、もしかすると。いやナイない、ナイと思いたい。



「大貝山の統べる地で生まれれば、直ぐに知らせる。そう決まりました。」


「そうだね。」


マノを優しく撫で、耶万神。ニッコリ。



もう迷わない。耶万がドウなろうが、いや違う。タヤや念珠ねずのような思いを、決してさせない。そのために力を尽くす。耶万神に仕える隠として、使わしめとして。






田鶴たづ。御覧よ、空が赤い。」


腰麻社こしまのやしろにて、使わしめ田鶴。神と仲良く、空を眺める。


腰麻神こしまのかみ。そろそろ、閉ざしませんか。」


「・・・・・・うぅん、それは。」



守る地を閉ざしても、人は通れる。


出入り出来ないのは、隠と妖怪だけ。閉ざせば妖怪になった、腰麻の者が戻れなくなる。いつ何が起こるか、私にも分からない。



腰麻でも体が育たないまま、生まれ出ている。他の地から来た人が、妖怪の子をはらんでいたとしても、見捨てられない。他にアテが無い、そんな人を。


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