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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
553/1583

8-37 潮の流れは分かっても


耶万やまから溢れた闇により、多くの命が奪われた。耶万を滅ぼし、耶万に滅ぼされた国を元に。という話も出たのだが、流れた。


人が居ない。


祝の力を持つ者は、耶万の大王おおきみおみたちに。そして残らず、命を落とす。それぞれの国で力を認められ、仕えていた臣やかしらなども、一人残らず。



国を動かすには強さも要るが、何より人だ。頭を使って戦える人が居なければ、国は守れない。その臣がポンポン放り込まれ、戦場いくさばで命を落とした。


残された道は一つ。気は進まないが、耶万を残すしかナイ。王として国を守れる、導けるような人は死んだ。だからと他の者を王にすれば、中から崩れる。






「あ、あの。すみません、オレには。」


海の男だが、頼りない。


水手かこだったのだろう、乗りこなせ。」


万十まと大臣おおおみ、イツがニコリ。



北の地から、命からがら逃げ帰った。戻れたのは、たった三人。


また送り込まれそうになったが、フラフラで動けなかった。だから残れた。他のが行った。で、誰も戻らなかった。



『もう嫌だ、舟なんて乗らない』ボロボロ泣きながら、ボソッと呟いた。そしたら王だよ、耶万の王。


オレは水手、王なんて向いてない。なのに、それなのに。あれよアレヨという間に、王になっていた。



「海に出れば、潮の流れは。でも王なんて。人の考えなんて、オレには分からない。」


気が弱いのに、王にされた。それがスイ。


「祝の力が無ければ、考えなんて分からないモンさ。」


氛冶ふやの大臣、アヤもニコリ。



万十も氛冶も、恐ろしく強い大国おおくに。その大臣が揃って、水手だったオレを王にしようと、朝から暮れまで。もう嫌だ、オレに王は務まらない。頼む、他の誰かに。


・・・・・・こ、ろさ、ないで。そんな目で見ないで、頼むよ。お願いします、お願いします。もう許して。



「スイ王よ。そのような弱腰で、国が守れるのか。」


「守れません!」


イツに問われ、即答。



・・・・・・。イツとアヤが黙り込み、ニッタァ。



「おレは、オれニ、おウなんて。」


声がコロコロ、裏返る。


「王に求められるのは、守りたいと思う心だ。」


おのの弱さと向き合い、逃げない。それが王だ。」



イヤだから、オレに王なんて務まらない。だ、だから頼むよ。そんな目で見るな。こわいコワイ怖いって、そりゃソウだ。この人たち、大臣だもん。


一人は万十、もう一人は氛冶の。あぁ、オレ終わったぁ。逃げられない。



耶万の皆、言うんだ。『スイなら信じられる』って。アレ、嘘だね。みんな王になんて、なりたくナイんだ。だからオレに押し付けて。



「継ぐ子が戻れば、落ち着くだろう。」


グイッと詰め寄り、イツ。


「皆それぞれ、しっかりイロイロ身につけて戻る。」


ググイと詰め寄り、アヤ。



だったらさ。継ぐ子の誰かが、王になればイイじゃん。オレ支えるよ。だから、その目はヤメテ。近い、近いよ。



「逃げられると思うな、スイ。」


「残り二人も逃げずに、受け入れた。」



スイは王、残り二人は臣になる。耶万のために。イザとなれば捨てられる、解っていても逃げられない。


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