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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
552/1584

8-36 使えるなら、使う


耶万やまに滅ぼされた国の多くは、戦狂いくさぐるい。中でも酷かったのが腰麻こしま正妃むかいめイナが産んだ子は優しく、賢い。側女そばめマコが産んだ子は皆、王と同じ。


一姫いちのひめユイには、祝の力は無い。しかし、その魂は美しく清ら。祝のユキと仲が良く、『王とやしろが力を合わせ、国を守る力になりたい』と。



「腰麻の祝も、命を。」


「はい。暴れ狂った妖怪からおにを守るため、首に噛みつき殺した事で妖怪に。ひるむ事なく戦い続け、はらい清められる事なく、生き残ったと。」


土はマノから、じかに聞いた。



腰麻の祝だったユキは、光の力を生まれ持つ。


妖怪化して失ったが、ぐに闇の力を得た。耶万の闇にさらされ続けた事で、さずかったのだろう。腰麻に戻らず、生き残りを探し続けている。


まだ一人も、見つかっていない。



四姫よつひめは、生かされて居るのか。」


「はい。国守として働く事で、許されていると。」



腰麻を残すため、多くの子が隠された。村外れ。山から入らなければ分からないように、隠して建てられた家に。


食べ物を差し入れるのは、二彦にのひこユズ。イナの子である。



四姫アキは言い付けを破り、外へ出た。村を抜け、王の住まいを目指した。それで見つかり追われ、隠れ家に逃げ込んだのだ。



ユイを身代わりにして逃げた。肩を狙って射た矢が、アキの胸を貫いた。娘を二人、死なせたつわものは考える。『あの中に、他にも』と。


ユズは守るため、戦った。とはいえ九つの子。アッサリ切り殺されてしまう。




生き残った親、ゆかりの者はアキを責めた。


なぜ言い付けを破った、なぜ隠れ家に逃げ込んだ。言い付けを守っていれば、ウチの子は。隠れ家に逃げ込まなければ、ウチの子は助かった。そう言って繰り返し、繰り返し。



死んだ者は戻らない。生きていれば戻る筈だ、しかし戻らない。というコトは、死んだのだろう。


償え! 妖怪になったのだ、国守として働け。そう言われ詰め寄られ、断れなかった。






隠れ家にはアキの母、マコも居た。


イナは王の住まいに残り、頭を使って戦った。いくさに敗れた後は、耶万と取り決めをするため話し合って。


なのにマコは、戦わなかった。守らなかった。隙を狙い、山に逃げた。



隠れ家で守られていた子らは、残らず連れ去られた。奴婢ぬひとして。


イナは身をていして皆を守り、大臣おおおみに腰麻を託した。その大臣も、子らを守って刺し殺された。守られていた子らも、生き残りも皆、奴婢に。



「側女は、生き残ったのか。」


「はい。四姫が国守として働くなら、生かすと。」



正妃の一彦いちのひこは、戦場いくさばで。一姫と二彦は、四姫の所為せいで死んだ。腰麻のために戦った、正妃イナも殺された。


生きていてほしい人が死に、裏切り者が残った。だから側女マコも四姫アキも、腰麻の民に逆らえない。生きるため、生き残るため。



マコもアキも、生きるてだてが無い。生まれた時からかしずかれ、のうのうと生きてきた。飢える事も凍える事も、渇きに苦しむ事もなく、ただ生きていた。


穏やかな時は良い。国や民のため、力を持つ男の妻となる。そのために生かされてきた、子を産む具。



腰麻が耶万に滅ぼされマコは、万十まとおみである兄を頼った。しかし、見捨てられる。悪い噂しか聞かない妹とめいを助けて、万十に何の得がある。


得どころか、わざわいしかもたらさない。




「妖怪でも娘。使えるなら、使うか。」


「おそらく。」


マコの考える事は一つ。おののためなら、他は捨てる。


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