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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
551/1582

8-35 困ったコトになった


「土よ、困ったコトになった。」


耶万やまに滅ぼされた国で、生まれているそうで。」


「ホウ、知って居ったか。」


「使わしめの集まりで、チラッと聞きました。」



土は地蜘蛛。息をひそめるくらい、何でもナイ。だからアチコチから、イロイロ仕入れられる。



「育つと思うか。」


「いいえ。聞く限り、人の体では耐えられません。」



母の腹を食い破って出るか、押し破って出るか。どの子も頭が大きく、体は小さい。母は痩せ細り、というより骨と皮。息をするのも、やっと。


生まれた子はバケモノと呼ばれ、母のむくろを食らって直ぐか、外に出て直ぐ殺される。叩き殺されるか、射殺されるか。それから家ごと、焼かれる。



大社おおやしろの帰りにな、チラッと聞いた。西国にしくにで、人と同じ姿で生まれたと。母が干乾ひからびるまで乳を吸い、アッと言う間に育つそうだ。」


「そっ、れは、その。まことで?」


「笑いながらな、話して御出でで。」


「では、しかし。」


「いや、真であろう。」



笑いながら話すコトか? いや違う。そうではナイぞ、大事おおごとだ。なのに『ワハハ』と、高らかに。


御名を・・・・・・、忘れた。が確か、糟国ぬのくに御坐おわすナントカの神! 禍津日神まがつひのかみで在らせられた。



「というコトは、そのうち。」


「生まれる。人と妖怪の、合いの子が。」



大貝神おおかいのかみ、使わしめ土。揃って溜息。幸せが逃げるヨ。とはいえ、嘆きたくもなる。



西国で生まれたバケモノ。母を干物状態にして、元気いっぱい。空腹を満たすため、狩りまくった。はい、その通り。里から村から人が消え、滅んだ国も有るとか無いとか。


いえいえ、有りますよ。


そうでなくても耶万に攻めるため、集めましたから。つわものをアチコチからゴッソリ。舟に乗せ、出航! いざ、耶万へ。で、全滅。正確には一人、逃げ帰りました。



もし、耶万行きの舟に乗っていたら。大貝山の統べる地に、到着していたら。



「西国の事は良い。もし大貝山の統べる地で、そのようなバケモノが生まれれば。」


「大事、ドコロの騒ぎではアリマセン。」


「そう。そうなのだ、土。」



使わしめの集まりで聞いた限り、人の子と同じように生まれたバケモノは、まだ生まれていない。この地でもソノウチ、生まれるカモ。



母は皆、痩せ細っている。人の子か、おにや妖怪の子か。膨らんだ腹に触れても、全く判らない。だから困って、集まった。



国守が守っているのは会岐あき、大石、加津、千砂ちさ。妖怪の子をはらんでいる娘は、助からないだろう。他にも居るが、人の子だろうと。ただ、ハッキリ言えないとも。


うね、伊東、光江はアヤシイ。妖怪の子は、今は生まれていない。けれど中には『はらの子がグニグニ動いて、気持ちが悪い』と言う者も。


悦、大野、久本、安は、かなりアヤシイ。人とは思えないほど、良く食べる。食べて食べて、グウグウ寝て食べる。なのに、ガリガリに痩せている。



「大貝神。チラッと聞いたのですが、腰麻こしま四姫よつひめ一姫いちのひめを殺して、妖怪になったそうです。」


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