表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
550/1587

8-34 生きたいバケモノ、死にたいバケモノ


「ハハッ、死ね。死ね、死ねぇぇぇ!」



人は、殺した事が無い。なのに、嬰児みどりごを殺せ?


嫌だって言った。ちゃんと言ったのに、国守として働けって。残りたければ働けって。『妖怪だろう』ってナニ、何なの。



外に出してもらえないから、水瓶を覗いた。良く見えなかったから、光が届くトコまで運んで、それで見た。驚いた。角が、牙まで生えて。



アタシは四姫よつひめ腰麻王こしまのきみの末娘。人だった。


言い付けを破って外に出て、耶万やまに見つかって逃げた。捕まれば奴婢ぬひ。売り飛ばされて、穢される。だからアイツ、思いっきり突き飛ばして逃げた。なのに死んだ。射殺いころされた。



そうソウそうよ、闇に包まれて力が溢れて。それで殺したんだ、いっぱい殺した。で、倒れた。気が付いたらココに居て、外に出られなくて、それでコウなった。



「バケモノ! バケモノめ! 死ね。」



ギラギラしてた。目を剥いて、怒りを叩きつけるように。同じバケモノなのに、認めたくなくて。逃げるように、求められるまま殺す。



涙で前が見えない。グチャッ、グシャッと、肉が潰れる音が聞こえる。ビチャッ、ビチャッと飛んでくる。


もう死んだ? まだ生きてる? サッサと死ねよ、助けろよ。






「ヴゥゥ。」 イキタイ。



狭くて苦しくて、透けて見える向こうに出たくて、思いっきり暴れた。パンッて音がして、広いトコに出たのに。


疲れたけど、お腹が空いて。いい匂いがしたから、残さず食べた。満たされなくて、もっと欲しくて。なのに、思うように動けなくて。



「ギャァァ。」 タスケテ。



何もしてない。なのに、どうして? バケモノって言うけど、そう変わらないよ。笑いながら『死ね』って、よく言えるね。酷いよ、あんまりだよ。


ねぇ、痛いよ。グチャグチャだよ。あぁ、死ぬな。助からないな。・・・・・・生きたかった、な。



「ヴッ。」 アッ。



痛い苦しい、寒い見えない。何も見えないよ。次があるなら、生きたいな。ギュッと優しく抱きしめて、もらえるかな。






バチバチ、バチバチバチ。


・・・・・・! ・・・・・・、・・・・・・。


バチバチ、バチバチバチ。



「あ、れ。燃え、て、る?」


グワンと、頭が後ろへ。見上げた先には、黒い煙。


「アキ!」


母さま?


「出てきなさい、さぁ。」


「フフ、フフフフフ。」


小さな笑い声は、燃え上がる炎に消される。歪んだ顔は、煙に隠される。




死んで妖怪になった。それが、ア・タ・シ。


正妃むかいめの娘と、三つしか変わらない。同じ姫なのに、扱いが全く違う。許せない。だから身代わりにした。



死ねば、おにになって戻る。見えないし触れられない。なのに見える、物に触れられる。ナンデ、オカシイ。オカシイヨネ。人に戻れないなら、隠に戻して。



ねぇ、神様。居るなら助けてよ。アタシもう嫌、疲れた。疲れたよぉ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ