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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
釜戸社編
55/1625

4-9 食いしん坊でもいい、健やかに育ってほしい

「エイ、起きなさい。」


うぅん、ムニャムニャ。


「ウフッ、おいしぃい。」


ポンッと、叩く。


「もう、この子は。」



「サカ。もう少し、寝かせておこう。」


娘に甘い。


「父さまぁ、好きぃ。」


父、デレデレ。伯母、呆れる。



「ナガ。」


ニッコリ。


「ハァ。」



「エイ、おはよう。」


ニッコニコ。そして、ガッカリ。


「母さん、いたの。」


「いますよ。」


うぅん、ムニャムニャ。寝坊助エイは、夢の中。



「おはよう、ササ。」


「おはようございます。ナガ叔父さん。」


「朝餉、食べるかい。」


寝坊助で食いしん坊、エイが飛び起きた。


「食べる。」




ナガとササが微笑む。この二人、エイに甘い。


「おはよう、エイ。」


「おはよう! ササ、サカ伯母さん。」


寝起きとは思えない。元気いっぱいである。


「父さん、おはよう。」


「おはよう、エイ。朝餉の前に。」


「顔、洗ってきまぁす。」


ピョンと立って、ササッと片付け、スタコラ、さっさ。




「ハァ。」


「サカ。ため息つくと、幸せが逃げるよ。」


「そう思うなら、少しはエイに。」


「嫌だ。」


「あの子は祝。厳しくしないと。」


「確かに祝さ。でも、子さ。たった一人の、私の娘。」



「父さん、洗ってきたよ。朝餉、食べよう。」


「そうだね。あ、そうだ。サカたちも、どうだい。」


「私たちは食べたから、いいわ。ありがとう。」


「そうか。」


「ナガ叔父さん、エイ、またね。」


「うん、またね。」




二年前、言われた。エイを祝にする、と。


ナガと社へ行き、それはもう、逆らった。三つの子に祝なんて、何を考えているのかと。


それでも、受け入れるしかなかった。火の声が聞こえるのは、エイだけだったから。


祝は親から離され、誰かと契るまで、一人で暮らす。だから、祝にする代わりに、いろいろ認めさせた。




親元で育てる。昼寝させる。熱を出したら休ませる。父ナガと、伯母サカが認めない限り、誰とも契らせない。決して一人にしないなど、思いつく限り、捲し立てた。



諦めるだろうと思った。なのに、すべて受け入れるから、祝に。そう言われた。


わかっていた。祝が次々、病に倒れ、どうしようもないんだと。それでも。いくら賢く、強い力を持って生まれたからって!




祝になったエイは、三つの子とは思えないくらい、とても良く働いた。


他の子と駆けまわったり、転げまわったりしたいだろうに、グッと堪えて。だから、つい甘くなる。それくらいは、と。




「母のいない子は」「あんな幼子に」陰口をたたく者がいる。


だから何だ。私がいる。さみしい思いなんて、決してさせない。甘いものを欲しがったって、いいじゃないか。モリモリ食べたって、いいじゃないか。寝坊、は良くないが。



パクパク。ニコニコ。モグモグ。ニコニコ。エイはいつも、とても幸せそうに食べる。


エイ、私の宝。このまま、真っすぐ、健やかに育っておくれ。


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