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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
549/1583

8-33 祝の力は無くても


「居たのですね。」


ふと、マノが。


「ん、国守ですか?」



大石にも加津にも、国守は居なかった。現れたのは、大祓おおはらえのち


大石のクベ、加津のミカ。二人とも耶万やま奴婢ぬひとして、北の地で死んだ。おにとなり、大王おおきみを殺すため耶万へ戻る。



詳しくは知らないが、妖怪になったのだ。殺したのだろう。闇に堕ちたのに残った、というコトは許されたか、何らかの罰を受けた。今もつぐない続けている。



「祝の力は有りませんが、『国を守りたい』と、強く願っています。」


「そのようですね。」



大石のクベ、加津のミカ。二人の国守には無い力が、会岐あき千砂ちさの国守には有った。祝の力だ。


会岐のフタには守り、千砂のモトには清めの力。二人ともいくさで死し、隠として戻る。そして、強い憎しみを抱く。受け入れられない行いを、目の当たりにして。


闇の力を得て、耶万の兵を皆殺し。妖怪に堕ちたが、人に望まれて国守となる。



「社に?」


「いえ、村外れに。」



ミカもクベも家を建て、村外れで静かに暮らしている。国守なのだ、社の側でも暮らせるのに出た。『中からは守れない、だから外から守る』と言って。



人には出来ない事が、妖怪には出来る。社付きだが、神に仕えているワケでは無い。堕ちても闇に纏わりつかれるダケで、誰も何も傷つかない。


傷つく事も、傷つける事も無いのだから。



耶万から溢れた闇には、祝の力が混じっていた。だから、だろうか。力が無くても姿が見える。妖怪なのに、牙も角も無い。見た目は人と同じ。でも、人では無い。



「他にも、居るのでしょうか。」


「居るでしょう。隠れているか、隠されているか。」



人と妖怪は、生きる時が違う。人は直ぐ死ぬが、妖怪は長生きする。会えば判るが、出てこなければ何とも。


隠れされているなら、祝の力を持たない子か女。一人では生きられず、ゆかりの者がかくまっている。



祝の力を持つ者は皆、耶万に連れ去られた。男なら戦場いくさばに放り込まれ、見た目が整っていれば売られたハズ。だから隠されているのは、力を持たない人。



「耶万から闇が溢れた時、あまりそこなわなかった。」


「多く生き残ったのは。」



うねは産ませるため、伊東はつわものを育てるため。今井は薬を作るため、光江は海から攻めるため。アチコチから集められていた。


悦、大野、久本、やす。どこも大国おおくにだったが、耶万に若いのをゴッソリ取られて、ほとんど残らなかった筈である。それでも多く生き残った、というコトは。



「調べますか。」


「申し出ると?」


バウに問われ、絞り出すように一言。


「・・・・・・難しい、でしょう。」



神が御坐せば話は早い。けれど御隠れ遊ばしたり、祝の力を持たない者がアレコレ。そうなると、アテに出来ない。


悦も大野も他も、ずっと前に見放された地。




「となれば、大貝社おおかいのやしろ。」


バウに言われ、マノが頷く。


「参りましょう!」


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