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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
548/1582

8-32 人の子で、妖怪の子


「そうですか。他では、そのような。」


バウから話を聞き、マノは思った。ヒドイと。


「はい。多くの人が、命を。」



大祓おおはらえにより、耶万やまの闇に飲まれたおにや妖怪は全て、消えて無くなった。神の御業みわざにより、清められた。


隠や妖怪との子を身籠みごもった人の多くは、守られなかった。やしろに逃げ込めたのは、ずっと守られた子と若者。他は入れず、光を浴びた。


悪い事ばかりでは無い。その光で、はらの子がはらわれた。しかし中には守られ、残った子も。それが今、騒がれているバケモノたち。



うね、伊東、光江など。耶万に滅ぼされた国の多くが、隠や妖怪に襲われた娘を入れなかった。しかし加津、千砂ちさ会岐あき、大石は違う。女と、胎の子を守った。


違いは他にも。いづれの地にも国守くにもり。妖怪になった元、人が居た。だから食われたのは、母のむくろだけ。他の人は助かり、守られている。



「他の地は。生まれたバケモノは。」


「狩り人が仕留め、焼いています。」



男は呼ばれるまで、産屋うぶやに入れない。


生まれて直ぐ、母の骸を。続いて産婆を。助けを求められない限り、飛び込めない。中で何が起きているのか、外からは分からない。



赤子でもバケモノかどうか、直ぐ判る。


赤子は歩かない、生れて直ぐ這えない。だから出たら、眉間を射貫く。妖怪の国守が居ない地は、そうして何とか、人の命を守っている。



近海(おうみ)の狩り人は、強いですからね。」


難攻不落の国として、大貝山の統べる地では有名です。


「大浦には。」


こちらも難攻不落。けれど、狩り人が少ない。


「釣り人は皆、もりの使い手です。」


一撃必殺、百発百中!


「出てきたらズブリ、ですか?」


「そのようです。」


ヒエェ。



「耶万に勝った国と、戦える国は良い。」


「負けても守れる国も。とはいえ、このままでは。」


「我ら使わしめに出来る事は、限られてります。」



いくらバケモノでも、使わしめには触れられない。姿を見せる事くらいしか。姿を見せても、逃がせるかどうか分からない。


耶万に滅ぼされた国には、社の司も禰宜ねぎも祝も、ほとんど残っていない。奴婢ぬひとして連れ去られ、死んだ。憎しみを抱き妖怪へ。大祓により旅立った。



生き残りの中には、継ぐ子も。しかし守れない。祝の力を持っていても、バケモノには勝てない。だから狩り人や、釣り人が戦う。


どちらもなければ、どうなるか。バケモノが死ぬまで、ひたすら食われ続ける。



「大貝山の統べる地に居る、全ての国守を。」


「集めたトコロで・・・・・・。」


「離れている間に生まれたら、どうする。」



集めるなら、はらんだ母も集めなければ。胎の子に力を奪われ、骨と皮に。大きく膨れた腹は、今にもハチ切れそう。そんな娘をドコへ。集めたとして、どのように。



「隠のときに頼ろうにも。」


「人の世の事は、人の世でと。」


追い返されるのが、関の山。



マノもバウも、思わず頭を抱える。


国つ神に仕える隠も妖怪も、人の命は奪えない。バケモノは人の子で、妖怪の子。だから奪いたくても、奪えないのだ。


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