8-31 贈るなら、喜ばれる物を
「嫌呂さん、どうでした?」
「産んで直ぐ、死んでた。悪鬼は?」
「同じです。産んで直ぐ、バケモノに。」
・・・・・・ハァ。
耶万、いや大貝山の統べる地で今、バケモノが生まれている。胎から出るモノ、食い破るモノなど。人の姿と違っているので、直ぐに判る。
人の体では耐えられないのか、体が出来てナイのに出てくる。大きな頭、小さな体。大きな口には、鋭い牙のような歯がズラリ。
「使わしめの集まりで、イロイロ分かりました。」
「おや。これはコレは、マノさま。」
ちょっぴりイジワルな言い回しで、嫌呂。
「真昼間に、宜しいのですか?」
ちょっぴりイジワルな顔をして、悪鬼。
嫌呂も悪鬼も、大蛇神より遣わされた妖狐。耶万に継ぐ子アコが戻るまで、力を尽くしてくれる。の、だが。
「加津と大石で食われたのは、どちらも母の骸。他は妖怪によって、シッカリと守られている。」
「で、マノさま。その妖怪を、とでも?」
「嫌呂さま。お願い、出来ますか。」
「お断りします。」
「悪鬼さま。」
「お断りします。」
加津神の使わしめ、ロロ。鳶の妖怪である。良い妖怪になるべく、加津神の使わしめに願い出た。嫌呂とも悪鬼とも、仲良しに。
大石神の使わしめ、バウ。元、狩り犬の妖怪である。山で暮らす獣からは、『力強さを感じます』と。遠回しに『コッチ来ないで』と言われ、ガッカリ。
嫌呂や悪鬼に限らず、山で暮らす妖怪たちは皆、思ってしまう。『加津に行くのは良いけれど、大石へは行きたくない』と。
マノだって蛇だ。心の奥底では、『そうだよネ』と。しかしココは思い切って、お願い・・・・・・しなくても、良いのでは?
「私が参ります。夕暮れまでには、戻りますので。」
シュルッと蜷局を巻き、ペコリ。
「分かりました。お任せください。」
コンコンず、ニッコリ。
気になる。とっても気になる。なぁに? 使わしめの集まりって。
大社では神議り。使わしめは出雲あちこち、のんびり楽しむって。アレ? 違う気がする。
蛇の集まりとか、狐の集まりとか、烏の集まりとか。ってコトは、耶万に国は滅ぼされたけど、神は御坐すヨ。だから使わしめ、集まれ! って事なんだ。
揃って頷き、モフン。嫌呂も悪鬼も、使わしめではナイ。けれど、大蛇神の使いである。鼠を取っ捕まえて、使い隠に捧げよう。で、イロイロと。ウフフ。
「月に幾度では無い。困った時に声をかけ、耶万に取り込まれた国の、神の使わしめが集まると聞く。」
一山の使い隠、ピィロ。鼠ダイスキ鳶である。丸丸した鼠を贈られ、ウットリ。知られて困る事ではナイし、大蛇神の使いなので教えた。
「そうでしたか。ありがとうございます。」
ペコリ。
一山から戻るまで、使い蛇に守ってもらっている。お礼の品を捕まえ、耶万に戻ったコンコンず。丸丸とした鼠を贈り、ニッコリ。
その時、聞いた。大貝山の統べる地を騒がせているのは、人と妖怪の合いの子だと。




