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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
大貝山編
545/1638

8-29 先ず、コレを


「クベさま! 子が、腹が。」


娘たちを支えている、御婆が叫ぶ。


「どうした。」


ミカに問われ、泣き崩れながら叫んだ。


「ボコボコ暴れてぇぇ。」



妖怪の子をはらんだ娘たちは、同じ家に集められている。皆ガリガリに痩せ細り、起き上がる事も出来ない。



「他の娘を出せ。今すぐ移すんだ。」


ミカに言われ、男たちが動く。


「行くぞ、クベ。」


「はい。」



いつもは一声かけて、気を使いながらソッと入る。けれど、何も言わずに飛び込んだ。一人づつ抱えて、使っていない産屋に運ぶ。



「悪いが、オレたちが。」


生まれてくるのは、バケモノだろう。産婆にもわかっている。だから何も言わず、頷いた。


「お願いします。」


弟だろうか。唇をキュッと結び、頭を下げた。




残された娘は、どう見ても子だ。十、いや八つくらいか。小さな体からは考えられない、大きくパンパンに膨れた腹。今にも弾けそうで、見ているダケで怖い。



膨らみ過ぎて、透けて見える。はらの子がこぶしを振り上げ、跳ねている。そのたびに叩きつけられ、白目で泡を吹く娘。


ウッウッと低くうめいているので、まだ生きている。




「娘さん。」


ミカが娘の肩を掴み、声をかける。


「ご、ろ・・・・・・、じで。」



こんな小さな体では、お産に耐えられない。生まれてくる子が、人の子であっても。



大石の子は大きい、ガッチリしている。だが、この娘は子だ。怖かっただろう、痛かっただろう。恐ろしかっただろう。



詳しい事は分からない。見知った顔か、知らぬ顔か。どちらにせよ、こんな子に・・・・・・。






「バンッ!」


腹がはじけた。ドサッと倒れ、モゴモゴ動く。ヌッと顔を上げ、ニッタァ。


「ウギャァァ。」


ミカが手にしたまきを、バケモノの口に噛ませた。


「クベ!」


ハッとして、炉の石を持ち上げる。


「ヤァァァ!」


繰り返し叩く、叩く、叩く。



ドン、ゴン、ベチャ。


「ギャァァ!」



ミカがバケモノを押さえつけ、クベが頭を叩き潰す。体は小さく、頭は大きい。幼子おさなごと同じくらい。こんなバケモノが、こんな小さな子の腹に。


息をするのも苦しかっただろう。腹に岩が入っているような、叩きつけられるような、そんな痛みに耐えて。



ごめん、殺さなきゃ。ごめん。ごめんよ。



ドチャ、バキッ。ビチャ、ベチャ。


「ギャァァァァァァァァァ。」



頭蓋が砕け、脳髄が飛び散り、眼球が転がった。頸椎が砕けて直ぐ、ミカはバケモノの体に膝を立てた。脊髄を砕き、バキッと押し潰す。


頭をクベ、体をミカに砕かれ、やっと死んだ。




母は・・・・・・、死んでいた。命は救えなかった。けれど、むくろは残った。


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