8-27 償うために、守るために
闇が両の手を広げ、追い込もうとしている。ソッチは嫌、行きたくない。アッチも嫌、怖いよ。闇に飲まれる、闇が絡みつく、闇に囚われる。
あぁあぁあぁ、頭が割れる。痛いイタイ痛いイタイ痛いんだ! 闇が近づいてくる。闇が広がる、闇が濃くなる深くなる。
眠れない。横になって目を閉じても、疲れていても眠れない。ウトウトしては、ガクッとする。眠れても飛び起きる。痛い、苦しい。
「あの子も、こんな感じだったのかな。」
耶万の大臣の娘。お母さんに似た、美しい子。優しくて、ニコニコしていて、みんなに好かれていた。
会えた、かな。死ねば隠になる。戻りたい所に戻れる。
根の国、隠の世かも。三人で仲良く、いつまでも幸せに暮らしてほしい。嫌なコト全て、忘れてさ。
ごめんなさい。オレに力が有れば、強ければ止められた。の、かな。あの時、この力を使えていれば。闇の力でアイツら全て、消せたのに。
・・・・・・いや、違う。もし使えたとしても、足りなかった。ヤツラを消すには、もっと強い力が要るんだ。
強くなろう。強くなって大王だろうが大国だろうが、手出し出来なくする。
「殺した、ん、だよな。」
殺しちゃイケナイ、奪っちゃイケナイ。『社で働く者は、皆を導く光に』って、笑っちまうよ。アイツに言われる度に思った。『オマエが言うな』って。
けどオレ、殺した。あの子を殺した。忘れない、決して忘れない。忘れちゃイケナイ。ずっと背負って生きるんだ。死ぬまで、ずっと忘れない。
「しっかりキチンと学んで、見張る。国を動かせるような、社の司になる。」
戦なんか仕掛けない、仕掛けさせない。負けない。闇に乗っ取られない、強い心を手に入れる。どんなに辛くても苦しくても、血を吐いて倒れても立ち上がる。
耶万は大国、アチコチ仕掛けて敵だらけ。だから狙われる、仕掛けられる。これからも、ずっと。
「戦なんか、闇の力で止める。止めてヤル!」
オレの中で眠っていた闇の力、なぜ目覚めたのか分からない。でも目覚めたんだ、使えるんだ。力に溺れなければ、守る事が出来る。それが闇。
耶万にピッタリ、オレにもピッタリ。
犯した罪を償うために、生かされている。罰を受けるために、生かされている。あの子の命を奪ったんだ、オレは。
「会えたよね。そう思って、良いかな。」
良い大臣だった。優しくて、賢くて強くて。あの大王に、言わなきゃイケナイ事をハッキリ言って。それで。・・・・・・それなのに、どうして。
質に取られちゃ、従うよな。
でも、ちゃんと言うコト聞いたじゃないか。ちゃんと務めを果たそうと、旅立ったじゃないか。戻って来られなかったけど、結んだ事は守れよ。
「許されるとは思わない、けど見ていて。必ず、耶万を良い国にする。大王とか大臣とかイロイロ見張って、耶万に滅ぼされた国ごと、暮らし易くする。」
西から大国が、次から次に攻めて来る。耶万が負けたら、次は良那か。そんなコト許さない。
闇の力は、恐ろしく強い。使い熟して戦う。この手で、皆を守るんだ!